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1ヶ月①
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「……佐伯さん」
朝を迎え、一ノ瀬くんの優しい声に目を覚ます。
柔らかい布団の感覚に、俺はまだ半分寝ぼけたままだ。
しかし、2度目の一ノ瀬くんの声に、俺は静かな動きで身体を起こした。
そしてその瞬間、ここは一ノ瀬くんの家なのだと自覚し、何となく気恥ずかしくなってしまう。
「おはようございます」
「…おはようございます……」
部屋にある掛け時計に目を遣ると、起きた時間はいつもより遅い。
一ノ瀬くんが作ってくれたのか、何か朝食のいい匂いがして、俺は朝食を作る時間を睡眠に当てていたことが分かった。
カーテンを開けて日差しを向けた一ノ瀬くんは、ベッドに手を付いて聞いてくる。
「朝食は着替える前ですか、後ですか」
(そんなことまで……)
俺は家に置かせてもらっている身なのに、一ノ瀬くんはそんなことまで気を遣ってくれる。
しかし、どっちでもいいと言うのも一ノ瀬くんを困らせてしまうから、俺の普段の生活を反映させることにした。
「着替えた後で、いいですか?」
控えめに言うと、軽く頷きが返ってくる。
「分かりました」
短的に言って、一ノ瀬くんは寝室を後にした。
1人残された俺は、ベッドから降りて布団を整える。
一ノ瀬くんのベッドだから、自宅でやるよりも丁寧に正す。
その後で、昨日適当にまとめた衣服が入っているスーツケースを引っ張って、こちらに寄せた。
とりあえずは、私服とスーツ、寝る時のジャージが1セットずつ入っている。
その他必要なものは、追々持って来るつもりだ。
ただ、量としては、帰る時に面倒にならない程度しか持って来ないことにした。
(着替えよう……)
恐らく、朝食は既に出来上がっているだろうから、俺は急いでスーツに着替え始めた。
▽ ▽ ▽
それから、出勤の時間が訪れる。
俺は一ノ瀬くんに合わせて、一緒に電車に乗り込んだ。
(ぅぅ……)
この時間帯の電車内は当然の如く満員で、俺は身体を固める。乗っているのは男性ばかりで、女性の方が少なかった。
「…気持ち悪いですか」
「へ……?」
俺の周囲を腕で取り囲む一ノ瀬くんに、思わず腑抜けた声が出る。
「顔色、悪いですよ」
周りの人たちに押されて、俺と一ノ瀬くんの密着度は凄いことになる。
俺よりも背の高い一ノ瀬くんだから、視界に映るほとんどが一ノ瀬くんたった1人だった。
乗客の人と俺との接地面積を無くしてくれているのだろう。
「大丈夫です……」
だから、その心配を無下にするようなことを言いたくなくて、俺は少し無理をしながら答えた。
「…そうですか」
一ノ瀬くんの身体は、更に俺に近付く。
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