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恋人とは①
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今日も、一ノ瀬くんのモーニングコールに目を覚ます。
朝が弱いところをあまり見られたくないのか、一ノ瀬くんは毎日、俺よりも早く起きていた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
本当に、まるで恋人同士のようだと思ってしまい、俺は咄嗟にその考えを払拭する。
俺は、どこまで自分に良いような考えをするのだろう。
違うんだ。俺と一ノ瀬くんはそんな関係じゃない。
俺はただの居候で、1ヶ月したら自分の家に帰らなければならない。
一ノ瀬くんは、神代から俺を匿ってくれているだけで、その為に泊めさせてくれているのだ。
ただそれだけの、同居生活。
恋愛関係にある訳では無い。
(恋人じゃないから……)
「……佐伯さん」
「はい?」
一ノ瀬くんが、俺の様子を窺うように顔を覗き込んでくる。俺は返事するのにワンテンポ遅れた。
「表情が暗いですよ」
そんなの、無表情の一ノ瀬くんに言われたくない。
「そんなことないです」
俺は、考えていることが一ノ瀬くんに悟られないように、口角を上げて言った。
そんなことで悩むなら俺と付き合えばいい、などと一ノ瀬くんは言いそうだから、絶対にバレたくはない。
「そうですか?それなら…」
すると一ノ瀬くんは、身体を傾けて、顔を俺に近付ける。
俺は触れられる前に両手で口を隠し、昨日みたいにされるがままになるのを避けた。
何だか、このまま唇が触れてしまうのはいけないことのように感じがしたのだ。
「……やっぱり、拒絶するんですね」
一ノ瀬くんは、困り顔で笑う。
「そんな態度取られたら、佐伯さんが何考えているのかなんて、すぐに分かります」
その言葉に、俺は何と返せばいいのか分からなくなった。だけど、素直に気持ちを言ってしまう訳にもいかなくて、俺は俯く。
「…キスは、駄目です……」
俺は、何を言ってるんだろう。
これじゃあ、キス以外はしてもいいみたいな言い方だ。
「……そうですか」
しかし、一ノ瀬くんがそこについて何かを言ってくることは無く、意外にもあっさりと身体を退いた。
いつもみたいに、俺をからかったりしてくることは無い。
「じゃあ、朝食準備して待ってますね」
「はい……」
俺は、小さく頷くしかなかった。
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