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⑦
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一ノ瀬くんの言葉で、少しだけ、不安が消えた。
何があっても、というのは、どこまでの範囲を示すのかわからなかったが、それでも、一ノ瀬くんはまだ俺を好いてくれている。
それが分かっただけでも良かった。
「……じゃあ、一ノ瀬くんに、1つお願いがあります」
だから俺は、ちゃんと自分の気持ちを確かめたい。
好きだってことは、相手と一緒にいたいと思うこと。
相手に触れたいと思うこと。
世良さんに教えてもらったそれを、確認するんだ。
それで一ノ瀬くんに気持ちを伝えるか、もう関係を前のように戻すかは、結果次第。
俺がそう思えなかったら、一ノ瀬くんとはもう終わり。
俺は、一ノ瀬くんのことが好きじゃなかったってことだ。その確認が出来れば、あとは後悔しない。
一ノ瀬くんへの気持ちは、きっぱりと断ち切るつもりだ。
「何ですか」
その優しい口調にはそぐわない内容だと思うが、これは言わなければならない。
だって、今の気持ちを正直に伝えることが、誠意ってものだと思うから。
「…俺は、一ノ瀬くんへの気持ちをはっきりさせたいんです。こんなあやふやな関係じゃなくて……好きなら付き合いたいと思うし、そうじゃなければ……もう元の関係に戻りたいんです」
目線の先の一ノ瀬くんは、表情を変えない。
「本当に、すごく勝手なこと言ってると、自分でも思います……だけどもし俺が、一ノ瀬くんのことは好きじゃないと思ったら、これからは、友達として、関わって欲しいんです。
一ノ瀬くんがそれでも、俺を好きでいてくれるなら……その時は、俺も、一ノ瀬くんを好きになれるように努力します」
一ノ瀬くんは、何も言葉を返してこなかった。
だから、俺だけがまだ、言葉を続ける。
「明日から2日間、俺は自分の家に戻ります。その間は、会社でも必要最低限しか俺に関わらないでください。そして、その後からは一ノ瀬くんの家に戻りますので、そうしたら答えを出します」
昨日、俺が考えたことだ。
いつもは俺が触れたいとかどうとか思う前に一ノ瀬くんから接してくるから、俺の本当の気持ちが分からなかった。
でも、こうすれば、俺が一ノ瀬くんに対してどう思っているのかが分かるはず。
もし明日からの2日間で、俺が一ノ瀬くんと一緒にいたいだとか、一ノ瀬くんに触れたいだとか思ったら、それは俺が一ノ瀬くんのことを好きだと認める証になる。
「…分かりました」
一ノ瀬くんは素直に承諾してくれた。
「お願いします」
俺は、一ノ瀬くんを好きでいたい──。
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