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③
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青山は、本当について来た。
特に断る理由も見つからなくて、ひとまず頷いてはみたんだけど、青山は相当食いついてきて。
ファミレスに着くまでは、色々と当たり障りの無いことを聞いた。
どうしてここにいたのか。
仕事は何をしているのか。
結婚はしているのか。
青山は、休みだったから遊びでここまで来てみたのだと答えた。
仕事は会社の事務業をしていて、結婚はしていないけど彼女はいるらしい。
話を聞く限りでは、普通に充実した生活を送っているようだった。
性格も、前と何も変わっていない。
寧ろ、青山からすれば、変わったのは俺の方だろう。
「──お席はこちらでよろしいでしょうか」
店員にテーブル席まで案内され、問い掛けに一ノ瀬くんが頷いた。
店員は、ご注文がお決まりになりましたらお呼びください、と丁寧な言葉を残し、この場を去る。
「………」
席の座り方は、自然と青山が1人という形になった。
俺と青山が向かい合わせになる。
微妙に気まずい空気が流れていて、俺は青山と目を合せることすらしなかった。
(どうしよう)
どちらとも顔見知りの俺が何か言うべきなんだろうけど、何も気の利いたことが思い浮かばない。
「…あー疲れた」
しかし青山は、座ってすぐにそんな声を出した。
その緊張感の無い態度は、心なしか雰囲気を和らげる。
大学の時から、青山といると自然体でいられたし、互いに気を遣うこともなくて楽だった。
俺は、今更になってそんなことを感じる。
すると、
「そう言えば」
と、ふと青山が身体を起こし、僅かに身を乗り出した。初対面の人がいたって何の態度も変わらないのは、本当大学の頃から同じだ。
そんな青山だから、俺は仲良くなれたんだと思うけど。
「君の名前とか聞いてなかったね」
その言葉は、だから教えて、というところまでを含んでいる。一ノ瀬くんは、別に嫌な顔をするでもなく、いつも通りの表情で答えた。
「一ノ瀬遥斗です」
「遥斗くんね。何歳?」
「23です」
「そうなんだ!何か大人っぽいね」
「そんなことないです」
「いやいや、よく言われるでしょ」
「…どうでしょう」
一ノ瀬くんは、青山の言葉にポンポンと短く返事を返していった。なんだか、見ているだけでも面白い。
「……ははっ」
だから、俺は思わず声を出して笑ってしまう。
何もかもが一緒だ。大学で仲の良かった頃を、すごく思い出す。
「何笑ってんだよ」
青山は前と変わらない調子で話し掛けてきて、それだけで緊張は少し緩んだ。
「…青山、ほんと変わらないな」
「そんなことないけど?大人んなったから!」
無邪気な笑顔でそんなことを言われても信憑性に欠ける。だけど、そういうところも、青山は青山だと、どこかで安心した。
男性を避けるようになってから、まともに青山と話したことが無かったから、そんな普通の会話が出来ることが俺には嬉しかった。
「青山は大人になれないだろ」
「可愛い彼女いるし、十分な大人だわ」
「彼女がいるのは昔から」
気が付けば、大学時代と変わりない接し方が出来ていて。自然と笑みも溢れた。
(…楽しい)
無意識に、そんなことを思ったりもする。
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