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突如話を転換され、俺は僅かに困惑する。
ファミレスに来る前は友達だと言っていたはずなのに、それを今更疑われているのだろうか。
とりあえず俺は、何の言葉も返せず首を傾げていた。
青山さんは、そんな俺の反応を楽しむように言う。
「…だってさ、佐伯は男性恐怖症なんでしょ?なのに、遥斗くんにはすげぇ懐いてるなぁ、と思って」
(懐いてる……?)
それは自覚無しだ。
懐いているというよりは、俺には慣れているといった方が正しいのかもしれない。
散々佐伯さんを泣かせてしまったという自覚はあるが、それでも俺に慣れてくれたことは、すごく嬉しかったりする。
「何でも言っていいよ!」
そう言われたって、まさか恋人です、だなんて平気な顔をして言える訳がない。
「……会社の、先輩と後輩です」
事実で当たり障りの無いことといえば、これしか思い浮かばなかった。でも、別に嘘を吐いている訳では無いから、答えとしては悪くないはずだ。
しかし、当然そんなのは青山さんの期待していた返事じゃない。
青山さんはポカーンとして、その後に笑った。
「いやいやいや、違うでしょ!それはそれで驚きだけどさ、絶対にもっとあるよね?」
「他に、ですか」
青山さんは、うーんと考える。
「親戚とか?」
「違いますね」
俺は即答してやった。
恋人だと言ってしまうのは、佐伯さんが嫌がりそうだし、この話はさっさと切り上げたい。
だけど、青山さんは到底話を終わらせるつもりは無いらしくて。
「大丈夫だって!それで佐伯のこと嫌んなったりしねぇし!」
「はぁ……」
なんだろう。
この人の、この軽いノリは。
全部言ってしまっても大丈夫な気がしてしまう。
青山さんなら、俺と佐伯さんの関係を言っても、それすらも受け入れてくれるような。
しかし俺は、それを言う前に、青山さんに聞きたいことを問い掛けた。
「どうして、友達っていうことを疑ったんですか」
別に、佐伯さんが俺に慣れているからと言って、友達以上の関係であるとは限らない。ただ単に仲がいいだけなのかもしれないし。
それに俺は、恋人らしいことなんて何もしていない。どこか疑う点などあったのだろうか。
「それ言ったら教えてくれる?」
青山さんは、どこまでも聞いてこようとする。
だけど、俺もずっと隠し続けているのは面倒だったし、とりあえず頷いた。
「あ、ほんと?じゃあ話すね」
青山さんは嬉しそうに笑い、話し始めた。
「うん……まぁ初めはあんまり疑ってなかったんだけど、友達って言う割にはお互い敬語だし、何か堅いなと思って。
どんな関係?なんて聞いたのも、実はカマ掛けただけだし、会社の先輩と後輩なんてのも納得した。
だけど、会社の先輩と後輩っていうのをサラッと言っちゃうなら、友達だなんて嘘吐く必要は無いよなぁ、と。だって、その時に友達だなんて言わないで、会社の先輩ですって言えばいいだろ?
だから、友達って嘘吐く必要があるくらいの関係なんだろうな、なんて思ったりしたんだよね」
たとえば、と青山さんは、俺が口を挟む隙を与えてくれない。
「…恋人だとかさ」
「……っ…」
俺の表情が分かりやすく変化したのか何なのか、青山さんは理解したように笑った。
どうやら青山さんは、性格の割には頭のキレる人のようで。
「図星?」
俺は、目を伏せて首肯するしかなかった。
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