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風呂から上がると、俺は適当に服を着てリビングで1人待機していた。
寝室で待っていようかとも思ったが、それは俺が期待しているみたいで嫌だったから、すぐにやめた。
その間、一ノ瀬くんは俺と入れ替わるようにお風呂に入っていて。俺は、いつ上がってくるのだろうと、やたらドキドキしていた。
そして、ぽた、と髪から水が滴り落ちるのを目にした時だった。
「…すみません、待たせてしまって」
「は、わっ……?」
一ノ瀬くんの声で咄嗟に顔を上げると、俺は動揺で可笑しな声を出してしまう。
一ノ瀬くんは俺と同じで髪が濡れていた。
僅かに、顔は火照っている。
俺の出した声に少しだけ驚いていたが、その後で、一ノ瀬くんはぷっと耐え切れないように笑う。
「何言ってるんですか」
(何って……)
別に、その言葉そのものに意味がある訳では無い。
俺は、一ノ瀬くんを見詰めたまま固まってしまった。
これから、前みたいに触れられるんだ。
そうやって意識してしまうと、頭から火が出たように顔が熱くなる。
それを何とか悟られまいと、慌てて手のひらでパタパタと扇いでみるが、全く身体の熱は逃げて行かなかった。
「暑いですねー……」
そう言って下手に笑っても、一ノ瀬くんからすれば何の意味も無いのだろう。
そもそも、今は暑いとか言っていられる季節ではない。
一ノ瀬くんは、何の表情も変えなかった。
「…心の準備は、まだですか」
その問い掛けは、まだ緊張しているんですか、と聞かれているようで。
俺が考えていることも、思っていることも、感じていることも、何もかもが見透かされているような気分になる。
もっと、俺が年上らしいことをしてやりたいと思うけど、やっぱり一ノ瀬くんには敵わないんだ。
「まだですよ……っ」
どうせ俺は、ずっと緊張しっぱなしなのだろう。
一ノ瀬くんとは違うから。
すると一ノ瀬くんは、俺の髪を梳いて言う。
「それなら、髪乾かしてからにしますか」
「っ……」
一ノ瀬くんは、自分の肩に掛けていたバスタオルを俺の頭に被せた。その上から更に手を重ねられる。
タオルは当然水分で湿っていたが、一ノ瀬くんが使ったものだから気にはしない。
「乾かし終わるまでに、覚悟は決めてください」
「早……っ」
覚悟を決めるだなんて、まだ早い。
そう言おうとしたが、昼から申告はされていて、余裕を持つ為の時間も一ノ瀬くんはくれた。
それなのに、まだ無理だと一ノ瀬くんに我儘を言って、事を先延ばしにしてはいけないと思って、俺は口を閉ざす。
「…分かり、ました……」
そう、素直に受け入れるしかなかった。
▽ ▽ ▽
頭をわしゃわしゃと触られ、一ノ瀬くんに温風で髪を乾かされる。時々髪の毛が顔に掛かってくるもんだから、俺は目を瞑った。
だけど、一ノ瀬くんの乾かし方は全然痛くないし、寧ろ気持ちいいくらいだ。
「……嫌じゃないですか」
「はい」
ドライヤーの音は意外と大きいから、それに負けないように声を出す。
洗面所で乾かされているから、目の前の鏡を見ると、一ノ瀬くんが映る。その表情は、少し楽しそうで。
何だかこうされていると、一ノ瀬くんの弟にでもなったような気分だった。
「髪、意外と柔らかいですよね」
「そうですか?」
「はい」
ふと、突然褒められて、俺は嬉しくなる。
可愛い、と言われるのは例外として、一ノ瀬くんに褒められるのは結構嬉しい。
「…じゃあ俺、一ノ瀬くんの髪の毛乾かします」
俺は、一ノ瀬くんの髪にも触ってみたいと思って言った。
幸い、俺の方を先に乾かしてくれているから、俺が一ノ瀬くんの髪を乾かすことも出来る。
鏡に映って見える一ノ瀬くんは、瞬間驚いたような顔をしたが、それからすぐに微笑を浮かべた。
「はい、お願いします」
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