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⑤
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何か煽ってしまったのか何なのか、一ノ瀬くんは突然にゆるゆると腰を動かし始めた。
その動きは優しいから、一ノ瀬くんの俺に対する気遣いや自制が伝わってくる。ただ自分の感情だけに従っている訳ではないんだって、分かる。
それでも、さすがに何の前触れもなく動かれたら身体がびっくりして、俺は慌てたように一ノ瀬くんへと抱き付いた。
「…ぃ、あっ…一ノ瀬くん……!」
「嫌ですか」
「そ、じゃないっ…けど……急に動かれたら、怖っ、ぃ…」
途切れる息の中で何とか言い切ると、俺は一気に吐息を吐き出す。
全然痛くない。
そんな慣れない感覚に、頭が麻痺したようだった。
一ノ瀬くんと出会う前までは痛い痛いと投げ出していた声も、今では全てが甘い吐息に変わる。
「はっ…ん、ぁ……っ」
恥ずかしい。
怖い。
それだけのこの行為に、果たして意味はあるのか、俺はずっとそう思っていたけど。
今は、そんなことがどうでもよくなるくらいに幸せだった。
初めて、こうやって繋がっていることに意味を感じて。喜びを感じて。幸せを感じる。
今までの恐怖とか不安とか心配とかじゃない。
俺はこの上なく嬉しくて、胸が高鳴って、それでもって涙が流れてくる。
もしかしたら、この地球上で俺がいちばん幸せな思いをしているのではないか、なんて自惚れてしまうくらいには幸せなんだよ。
(ねぇ……)
いつか、今感じている幸福の分が、不幸に変わって返らないように、俺は一ノ瀬くんの手を離したくはなかった。
絶対に、何があっても掴んでいるから。
「…一ノ瀬、くんっ……?」
「はい…」
俺は、何度だって名前を呼ぶよ。
だって、駄目なんだ。
俺はこんなにも一ノ瀬くんが好きでたまらない。
一ノ瀬くんから感じる何もかもが、俺には嬉しかったんだ。
「好き……っ、本当に、大好き…なんです…っ」
それだけは伝えたくて、俺は必死に言葉を口にするけれど、一ノ瀬くんはなぜか可笑しそうに笑う。
「…知ってますよ、そんなこと」
そして頭を撫でられると、俺自身も訳が分からないくらいに泣けてきた。
もう、離れたくない。
ずっとこうしていられたら、どれだけ幸せか。
それが叶えばいい。
いつまでも一ノ瀬くんの側にいられたら、俺は幸せだ。
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