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③
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そして2回戦目が始まった。
まだ序盤はみんな平均的な枚数で、ジョーカーは俺の手持ちじゃない。
一ノ瀬くんから1枚引くと、数字が揃って1枚減る。
早坂さんに抜かれて更に1枚減るが、早坂さんもペアができたみたいだった。
(よし……)
絶対に、今度こそは負けられない。
媚薬というものに本当に効果があるのかは分からなかったが、それでもゲームの罰ゲームとしてのスリルは十分にある。
正直、未知なものが怖かった。
たかが一滴。
そう思うけど、やっぱりその一滴で身体が可笑しくなるのではないかと考えると不安になる。
「わー!揃ったー!」
そうやって他の誰かがペアを作る度に、変な汗をかきそうになった。それから、焦る。
「あ、オレも揃った」
そうしてまた、順番が近付く。
一ノ瀬くんがカードを引くと、ペアはできなかったのか、抜いたカードは手元に残った。
嫌な感じだ。
さっきのこともあるし、一ノ瀬くんはジョーカーを引いたとしか思えない。
(どれだ……)
引いた後に軽く混ぜられたから、世良さんから引いたカードがどれか分からない。
俺はとりあえず、4枚向けられているうちの、いちばん右側のカードに指を触れた。それから、一ノ瀬くんの表情を覗う。
すると、一ノ瀬くんは僅かに首を縦に振った。他の人には分からないような、小さな合図。
「……?」
それが何を示すのかが分からなかった俺は、次に隣のカードに指を移す。
一ノ瀬くんの反応は、また同じ。
一度首を縦に振る。
それならばと次のカードに触れると、一ノ瀬くんは小さく頭を振った。それも、俺にしか分からないような合図で。
(ジョーカー……?)
1か所だけ別の反応となると、それがジョーカーだとは思う。
しかし、念の為に最後のカードも選んで一ノ瀬くんへ目を向けてみた。
一ノ瀬くんの合図は首肯。
となると、やっぱり右側から3枚目のカードがジョーカーということになるのだろうか。
そもそも、どうして一ノ瀬くんはこんなことを教えてくれるのか。
なんて、ここまで教えてもらって疑問が湧くが、わざわざ3枚目のカードを引いていられなかった。
俺が3連敗して終わるなんて嫌だったから。
(……これか?)
ジョーカーだと思われるカード以外ならどれでも良かったが、俺は右側から2枚目のカードを引く。
表に捲ってみると、それはダイヤのKだった。
▽ ▽ ▽
2回戦目は、一ノ瀬くんが負けて終わった。
いや、言ってしまえば、負けてくれたという方が正しいのかもしれないけれど。
だが、それから何回かババ抜きを続けた結果から見れば、惨敗したのは俺だった。
2回戦目以降、一ノ瀬くんがカードの中身を教えてくれることはなく、俺は3回負けた。
つまりは、たったの4回でゲームは終わってしまった訳で。
「案外早く終わっちゃったね」
なんて、3滴目の媚薬を俺のコップに入れて世良さんは笑う。効果は少ないと言っても、そんなものを飲むのには気が引けた。
そもそも、本当に効果なんか出るものなのだろうか。
「はい、飲んでね」
俺と一ノ瀬くんの眼の前に、媚薬入りの飲み物が置かれる。中身は、どちらも麦茶だ。
一ノ瀬くんは特に躊躇うこともなく、すぐにそれを飲み切ってしまって。
「…美味しいですか……?」
「普通です」
やっぱり、1滴程度じゃ味は変わらないのだろうか。
周りの視線が俺に集中する中、俺はコップを手に持つ。
そして、飲みたくないな、と心底嫌になるけど、仕方無く麦茶を体内に流し込んだ。
「…っ……」
大して意味は無いと思うのだが、俺はできるだけ一気に飲み干す。味に可笑しな変化は無い。
「どうですか、佐伯さん!」
空になったコップをテーブルに置くと、生駒さんが食い気味に聞いてきた。
俺は、変なものを飲んでしまったということからテンションが下がる。
「…普通にお茶です…」
それしか、言う言葉がなかった。
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