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効果①
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カレーを作り終わるのには、最終的に2時間近くも掛かってしまった。
(なんか、変だ……)
その後半の30分から、どういう訳か身体が熱くて。
いや、理由は分かっているんだ。
多分、あの媚薬。
時間が経てば自然と収まると思っていたのに、効果は薄れるどころか余計に強くなっていくばかりで。
「早坂さん見てください!私が作ったカレーです!」
「そう……何というか、結構……」
「まぁ、そこは大目に見てあげて」
幸いにも今は作った料理がテーブルに並び、みんなの意識はその料理に向いている。
俺は何とか、火照る顔も乱れそうになる呼吸も無理矢理抑え込み、自分の腕を抱き込んだ。
「…は…っ……」
視線だけを一ノ瀬くんへ持ち上げると、丁度一ノ瀬くんと目が合って。俺は慌てて顔を逸らす。
一ノ瀬くんに何の変化も無いのは、飲んだ量の違いなのか、ただ単に個人差の問題なのか。
「早く食べたいです!」
「じゃあ、いただきますしようか」
パンッと勢い良く手のひらを合わせた生駒さんに続き、他も手を合わせる。
俺は少し動くだけでも辛くなり、みんなと遅れてから手を合わせた。目の前の料理なんかには、全く意識が向かない。
(無理……)
こんな状態では、料理なんて食べられそうになかった。
「いただきます」
「いただきまーす!」
世良さんの後に、生駒さんが大きく声を発する。
そのお陰と言っては何だが、俺が声を出さなくても特に気になることはなかった。
(辛い……)
だけど、俺は一分一秒でもここにいたくなくて、即座に立ち上がった。よろけてバランスを崩しそうになると一ノ瀬くんに腕を掴まれ、そんなことにすらも身体はビクリと跳ねる。
「…っあの……トイレ、行ってきます…」
俺がそう言うと、一ノ瀬くんはそっと手を離してくれて、みんなが料理を口に運ぶ中、俺は1人でリビングを出た。
(気持ち悪い……っ)
思わずトイレに行くと言ってしまったが、トイレに行ったところで、俺だけでこれに対処することはできない。
足にも手にも、どこにも力が入らないみたいで、俺は壁伝いに歩く。
「はぁ……は…っ」
なんだよ、これ。
思った以上に効果は大きい。
苦しくて、辛くて、ひたすらに熱い。
(ど…しよ……)
トイレに入っても、その場にしゃがみ込むことしか俺にはできなくて。蹲りながら呼吸を荒くする。
できることなら、これが収まるまではここにいたいけれど、それこそ俺が戻らなくなったことで探されたら大変だ。
媚薬でダメージを受けてトイレに篭っていたとか、そんなの恥ずかしすぎる。
「も、やだ……」
(動けない……)
ここから立ち上がるなんて以ての外、少し動くだけでも擦れただけ身体が反応してしまう。
だけど、1人で抜くのはもっと嫌で。
もう、どうしようもない。
本当に泣けてくる。
携帯なんて勿論持って来ている訳がないし、誰も呼ぶことはできない。せめて、一ノ瀬くんについて来てもらえば良かった、なんて思っても、今更だ。
(…一ノ瀬くん……来て……)
そんなことを思っていると、突然外から足音が聞こえてきて。
「……ひ…っ」
扉をノックする音に俺は息が止まった。
その瞬間に、誰?という疑問が頭の中をいっぱいに埋め尽くす。もしも生駒さんや早坂さんなら、それこそ最悪な展開だった。
絶対に、平日から変な目で見られるに違いない。
そんなのは御免だ。
「…はい……」
そんなことで、俺は恐る恐る返事をしてみる。
どうか一ノ瀬くんであってほしいと願いながら。
すると聞こえてきた、こちらに問い掛けてくる声。
「入っても大丈夫ですか」
「あ……」
その声は、紛れもなく一ノ瀬くんのものだった。
本当に一ノ瀬くんは、俺が来てほしいと思った時に来てくれる。それが俺にとって、どれ程嬉しいことか。
今までに何度救われてきただろう。
「一ノ瀬くん……」
俺は頭が混乱してしまい、泣きそうになりながらも名前を呼んだ。
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