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街中へ出ると、案の定周りの人からの視線は痛い程に注がれた。俺はやたらとぐったりしているし、皆不思議そうな目で俺たちを追う。
こうなることは分かってはいたけど、やっぱり実際に外ヘ出ると思っていたよりもずっと恥ずかしくて、息も詰まった。
だって、中学生とか高校生とか、もうそんな可愛い年でもないのに。
(恥ずかしい……)
とは言いつつも俺は顔を伏せているから、きっと一ノ瀬くんの方が恥ずかしい思いをしているのだろうけど。
一ノ瀬くんは、そんなことは気にしないとでも言うように普通に歩いている。
「……あの、一ノ瀬くん…」
俺が小さな声で話し掛けると、一ノ瀬くんは、はいと言葉を返した。あまり大きな声で話すと、余計に周りの視線を集めそうで。
「こんなに見られて、嫌じゃ、ないですか……?」
少なくとも、俺は心地の良い気分ではない。
本当は一ノ瀬くんだって嫌なのではないだろうかと不安になった。
しかし一ノ瀬くんは、吐息を漏らすように小さく笑って。
「嫌じゃないですよ。こうやって佐伯さんが抱き付いてくれるので」
そう、さらりと言ってのける。
また変なことを言って、と俺は少し呆れたけれど、悔しくも一ノ瀬くんに反論するまでの気力は無かった。
「…馬鹿」
ただ、そうとしか返せない。
俺が今どんな表情をしているかなんて、想像もしたくなかった。
それなのにも関わらず、一ノ瀬くんは言葉を続ける。
「…今だから言いますけど、男性が苦手な佐伯さんが、こうやって俺にだけ触れてくれているということが、俺にはすごく嬉しいんですよ。
それだけ、俺には心を許してくれているということでいいんですよね」
今だから、というのは、俺が弱っているからということなのだろうか。
今更、いいのかと確認なんかされても困る。
そりゃ、こんなふうに背負われているのも、一ノ瀬くんだからという理由に他ならない。
他の人なら、絶対に嫌だった。
「今更、言わせますか……」
どうせ、全部分かってるくせに。
「…そうですよ……好きだからに、決まってます……」
そんなことを言うと、顔から火が出そうなくらいに真っ赤に染め上がってしまい、心臓が煩く脈を打った。
これが、一ノ瀬くんに聞こえてしまわないかと心配になる。
「なんか、言ってください……」
こういう時に限って、一ノ瀬くんは黙り込むから。
こっちが余計に馬鹿らしくなる。
すると声を発した一ノ瀬くんは、いつになく弱々しくて。
「どうして素直に言うんですか……」
「え……?」
それから一ノ瀬くんは何も話さなくなって、一ノ瀬くんがどんな表情をしているかは、何となく予想がついた。
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