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④
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わしゃわしゃと髪を洗われると、不覚にも眠ってしまいそうになる。
さっきまでとは状況が全く違う。
膝立ちの一ノ瀬くんは俺をバスチェアに座らせて、丁寧に頭を洗ってくれていた。
今はすごく心も身体も落ち着いていて、疲れることもない。しかし、その反動で酷い眠気も襲ってきている。
一ノ瀬くんに頭を洗われていることが心地良くて何度も頭をカクカクと動かせば、その都度また元の位置に戻された。
「佐伯さん、眠っちゃ駄目ですよ」
「………ん」
ワンテンポ遅れて返事をするが、その直後にも、カクンとまた頭を落とす。
それで一ノ瀬くんが笑うけど、そんなこと、俺には分からなかった。
「佐伯さん、泡流すので目閉じててください」
そう言われて、俺は素直に目を瞑る。
そして、てっきり一気にお湯を掛けられるものだと思っていのに、一ノ瀬くん少しずつ泡を流すから、俺は本当に眠りそうになった。
起こしたいのなら、お湯をぶっ掛けてしまえばいいのに。言葉とは裏腹に、一ノ瀬くんは俺をどうしたいのかが分からない。
「……佐伯さん、あんまり動くと流し難いです」
一ノ瀬くんはわざとなのか、言葉の始めに必ず俺の名前を呼ぶ。多分、それが無かったら、俺は一ノ瀬くんの言葉なんて耳に入れていないと思う。
「…………ん」
だが、俺はもう、それくらいしか言葉を返すことができなかった。
上がったらすぐにでも寝てしまいたいけど、今は駄目だ。これでも、家に世良さんたちを置いて来ている身だったから。
でも、やっぱり眠いものは仕方が無い。
(もう、無理……)
「…佐伯さ……って、危な……」
俺が身体ごと後ろに倒れてしまいそうになり、一ノ瀬くんはそれを受け止めてくれた。
後ろから一ノ瀬くんに強く抱き締められる。
「……ほんとに……頭打って死にますよ…」
そう言いながらも、一ノ瀬くんは俺の体勢を元に戻してくれる。腕を解いてはくれなかったけど。
肌と肌が直に触れ合って、それだけでも身体が温かくなる。
「…ごめ、なさ……」
寝落ちしそうになりつつ、俺はそんなことを口にしてみた。もう最後は、言葉にすらなっていない。
「もう上がりますから、寝ないでくださいよ」
「無理……」
「駄目です」
(なんだよ……)
駄目だなんて言われても、人間、睡眠欲には勝てない。人間の3大欲求のうちのひとつだぞ。
それに、一ノ瀬くんには分からないかもしれないけど、あの行為にも相当な体力を使うんだから。
「…佐伯さん、せめてお風呂から出て寝ましょう?」
「ん……」
口では返事をしても、俺は目を開くことさえ億劫になって、眠気なんて到底覚めそうもない。
すると、そんな俺の態度に痺れを切らしたのかなんなのか、突然一ノ瀬くんがちょっかいを出してきた。
「…ふぁ…っ、ん……」
かぷ、と耳を噛まれ、そこから首筋に掛けて舌を這わされる。背筋がゾクゾクして、俺は下唇を噛み締めた。
ダイレクトにそこへ触れられるのとは別の、新しい感覚に見舞われた。
「一ノ瀬くん……いや……っ」
「じゃあ、ちゃんと移動してくれますか」
執拗に首元を舐められ、聞かれる。
俺は、何度も首を縦に振って頷いた。
「ぁ……ぅ…っ」
そうすると一ノ瀬くんは素直に止めてくれて、途端に俺は、くた、と項垂れた。少しだけ息を乱れさせ、それでもなお、瞼は重くて。
「……結局寝るんですか……」
俺は、眠気には抗えなかった。
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