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⑤
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気が付くと、そこはベッドの上だった。
俺はもぞもぞと身体を動かして、ゆっくりと目を開く。
「んぅ……」
(一ノ瀬くん…?)
横を向くと、そこには一ノ瀬くんが眠っていた。
どうやら俺は風呂場で眠ってしまったらしく、俺だけが何も服を着ていない状態だった。
ただ、それでも一応冬だから、毛布と布団はしっかりと掛けられている。
(気持ちい……)
ふかふかの布の感触が、直に肌に触れると気持良かった。俺は、顔が隠れてしまうくらいに上まで布団を上げる。
すると、それで一ノ瀬くんが起きたのか、一ノ瀬くんも眠たそうな声を出して動いた。
「……佐伯さん……」
寝言なのか、意識があって名前を呼んだのか。
その後で、一ノ瀬くんの腕の中に抱えられた。
「一…ノ瀬くん……?」
「………はい…」
一ノ瀬くんは返事を返してくる。
ということは、全部意識があっての言動だったようだ。
そして俺も色々と意識がはっきりしてくると、当然昨日のことが思い出された。
そういえば、と言葉を発す。
「…あの、世良さんたちは……?」
まさか、あのまま放置しておいたとは言わないだろうが、それだけが心配だった。
家主が不在でお客を放置するなど、まず有り得ないことだ。一ノ瀬くんが対応してくれたとしても、それに関しては本当に申し訳無いと思う。
一ノ瀬くんは、あぁ、と思い出したように言ってから、そのことについて話してくれた。
「それなら大丈夫です。昨日佐伯さんをベッドまで運んだ後、家まで戻りましたので」
(良かった……)
俺はひとまず胸をなで下ろす。
「ありがとうございます…」
「はい。洗い物とかもちゃんと終わらせておきましたので心配ないです」
それを言われた瞬間、生駒さんに皿を割られていないだろうかという不安が頭を過ったが、俺は考えないようにした。
それから一ノ瀬くんに返事を返そうとした時、丁度タイミングよくお腹が鳴って。
「…ふふっ」
一ノ瀬くんに笑われた。
「佐伯さん、昨日からほとんど何も食べていないですからね」
一ノ瀬くんはそう言って、重そうに身体を起こす。
まぁ、それは起きたばかりだし当然だ。
「どこ行くんですか……?」
問い掛けると、一ノ瀬くんはベッドから降りつつ答えた。一ノ瀬くんが私服で寝ていたということに、俺は今気付く。
「簡単に何か作ってきます」
「え……」
一ノ瀬くんが立ち上がる前に、俺は一ノ瀬くんの服を引っ張った。
「それは、申し訳無いです……昨日、寝たの遅いですよね?」
ベッドに腰掛けたままこちらを振り向く一ノ瀬くんは、少しばかり驚いたような表情をする。
だって、今日の一ノ瀬くんはいつもより気怠そうだし、私服で寝るなんて着替える時間も無かったに違いない。
睡眠時間も短いのに、そこまではさせられなかった。
「…今日は、俺が作りますから。一ノ瀬くんは休んでいてください」
俺が布団を捲り、ベッドを出ようとすると、それを一ノ瀬くんに止められる。
両肩を押さえられ、再びベッドに身体を戻された。
「いいです。俺が、佐伯さんに作ってあげたいだけなので」
一ノ瀬くんは、俺の髪を一撫でする。
「…どうして、ですか…?」
訳を問いても、一ノ瀬くんは微笑むばかりで何も言ってはくれなかった。
どうしてか、それは譲れないとでもいうような態度で。だから俺も、無理に作らなくてもいいとは言えない。
「……じゃあ、その後、ちゃんと休んでくださいね」
「はい」
一ノ瀬くんの返事を聞いて、俺は大人しくベッドに身体を倒した。
一ノ瀬くんは、ありがとうございます、と一つ瞼にキスを落として、ベッドを降りる。
「…もう少し、眠っていていいですよ」
「…ん……」
本当に、一ノ瀬くんの声は眠気を誘う効果があるのか。俺はそっと目を閉じた。
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