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4.嘘なんてつきたくない-2
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ユキジは近くにあったティッシュで顔を拭い、目元も拭った。
早く口も濯ぎたい。そう思ったユキジは、朦朧とする意識の中その場から離れてトイレへと向かったのだった。
(吐きそう……)
撮影は始まったばかり。逃げ道などどこにもない。それに、明日撮るシーンはキスシーンだ。距離が近い。
けれど、救いもある。それは、そのシーンは本当にしないと言う事だ。
しているように見せれば良い。そう台本に書いてある。
「い…せい……」
壱成からの連絡を既読せずにいるユキジ。会わす顔がないのだ。
この、ラウルのを咥えた口で言葉さえ交わしたくもない。
嫌われたくない。
知られたくない。
会いたくない。
けれど、明日、壱成と同じ撮影現場だった。
ラウルとのキスシーンを、壱成の前でする話しになっている。
どっちみち、壱成にはラウルとの淫らな部分は見られる。例えそれが、仕事だとしても。
「う……ゴホッ、ゲホッ」
ユキジはトイレに入ると、すぐに手洗い場で口を濯ぎ、飲んだ物を指を使い、吐き出した。
荒療治だが、そうしないと全て綺麗になった気がしなかったのだ。
声優として、喉を大事にしてきたのに、してはならない事をしてしまっている。
仕事に支障が出なければ良いのだが。そう願うしかなかった。
「ハァ……ハァハァ……」
吐き出し、少し落ち着くと顔を上げた。すると、鏡には窶れた顔をした自分の顔があった。
酷く疲れた顔だ。
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