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1.初恋は突然に……-9
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誰かにそう言う風に認められたのは初めてだったユキジは、今にも倒れそうなほど、心臓を速くしていた。
まさか、そんな事言われるなんて。声を、褒められるなんて。ユキジは泣きそうになる。
「一緒に頑張ろうぜ」
「う、うん……」
目の前の男がユキジに手を差し伸べてきて、ユキジの汗ばむ手をギュッと握った。
その手は大きく、男らしい手で、自分とは違う手だと思い知らされる。
「よし、そうとなると行くぞ!」
「え?」
「資料、取りに行くぞ」
「う、うん」
手を引かれ、男が走り出すスピードに合わせ、ユキジも一緒に走った。
人の目なんて気にしない。そんな事、思う日が来るとは思ってもいなかった。
でも、この人となら自分は変われる。そう、思えた。
「願書、あんたのも貰ってきてやるよ」
「え……?」
走りながら、男がそう言った。
その言葉に、ユキジは、どうしてと聞く。すると、男はユキジの目を見て、こう答えた。
「その目、隠したいんだろ? 俺が願書貰ってくる間にトイレ借りてつけてこいよ」
「え……?」
その言葉に、ユキジは塞き止めていた涙が一雫コンタクトが外れた青い目から落ちた。
それに、男は気付いていない。
「綺麗な青なのに勿体無いけどな」
そして、言葉の最後にそう告げられた。
その言葉はユキジにとって、生まれて初めて嫌悪感や拒絶を含まない言葉だった。
そんな事、言ってくれたのは祖母だけだった。
「なに泣いてんだ? 時間ならまだ余裕だぞ」
「う、うん……」
ユキジは、コクッと頷くと一緒に走った。
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