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5.好きな人とのキス-3
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そして、その日は来た。
ずっと片想いして来た相手とのキス。それも、こっちから強引にするキス。
(吐きそう……)
午後からの撮影なのに、朝から何も食べれてない。
食べたらすぐにトイレに直行してしまいそうだったからだ。それくらい、緊張していた。
「顔色悪……」
「……。おはようございます」
そんなユキジを、控室に入って来た壱成が心配してるような顔で見ていた。ユキジはペコッと頭を下げる。
「あんたさ、どんだけ緊張してんの?」
「とてもでふ……」
「とてもでふとか……」
壱成は呆れた顔でこっちを見て、ユキジの隣に座った。
「好きな人とキスなんだろ? もっと嬉しい顔しろよ」
「それ、この間も言われましたけど……僕には無理です」
「なんで?」
「な、なんでって……。と、冬椰さんは嬉しかったですか?」
「え……?」
「前の撮影で秋幸さんとキスしましたよね……」
「あぁ。でも、初めてじゃないし」
「ええ! は、初めてじゃないんですか!」
「ああ。前に強引にキスした」
「……強引って。最低」
「最後の方聞こえてる」
まさか、秋幸とのキスを撮影関係なく経験済みだったとは知らなかったユキジは、なぜか少しだけ緊張が解れて来た。壱成と会話をしていると、内容がどんな酷くても落ち着けたのだ。
「あんた、飯は?」
「え……?」
「食べてない顔してる」
「そんな顔してますか?」
「してる」
「でも……食べたくなくて……」
そう言ったユキジに、壱成は目の前のチョコレートが入った瓶に手を伸ばし、それを空けてヒョイっと口に入れた。
「えっ……ンンッ!」
そして、ユキジの腕を掴みキスをして、自身の口に含んだチョコレートをユキジの口の中へと入れた。
(甘い……)
口移しで口に入れられたチョコレートは今まで食べた中で一番甘く、美味しく感じた。そう思うくらい、自分は空腹だったようだ。
「少しくらい食べないと撮影中腹が鳴るぞ」
「だ、だからって……」
「感謝してください。俺に」
「かっ、感謝なんてしっしません!」
口の中がチョコレートでいっぱいだ。それは、壱成とのキスの味のようで心が落ち着かない。
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