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6.気になりだしたら止まらない-6
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泣いたって意味はない。ただ、壱成が困るだけだ。そんなの分かってるのに涙が止まらない。
「泣くほど嫌か?」
「だって……」
「だって?」
「君は……秋幸君の事が好きだから……」
「え……?」
好きな気持ちやその想いの強さをユキジは知っている。知っているからこそ嫌だった。嫌で嫌でその想いが涙へと変わった。
「俺が秋幸が好きだから駄目なのか?」
その質問に、ユキジは無意識に頭を縦に振った。
そうだと、無意識の行動でユキジは壱成に伝えてしまう。
「ぼ……僕は……秋幸君の代わりになんてなれっこない……」
人を惹きつける魅力や、その優しさを自分は何一つ持ってなどいない。
そんな人間を好きだと言われても嘘にしか聞こえない。それに、そんな事を言われて笑って返せるほどのコミュニケーション力をユキジは持ってなどいない。
こういう時、コミュニケーションが高い人は笑って返せるんだろうなと思う。笑って、何言ってんだよっとその場を交わすことができるはずだ。でも、ユキジはそんな事はできない。
壱成のその言葉に、ほんの少しだけ嬉しいと思っている自分もいたからだ。
秋幸の代わりにはなれっこないけれど、なれたらなと思う自分がいる。不思議な感覚だ。
「他をあたって下さい……」
ユキジはニコッと切なく笑い、壱成にそう言った。こんな自分よりももっと他に良い人間がいる。壱成好みの人間がたくさんいる。
そう思うと、胸がだんだんと苦しくなる。
壱成がこれから他の誰かを探しに行くと考えて嫌だと感じる。
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