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6.気になりだしたら止まらない-10
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本当に、この人は自分の事を愛してくれている。そう、信じられるほどの強い抱擁だった。
「なんで僕なんか好きになったの……?」
親にも捨てられたこんな醜い人間を、どうして。そう、ユキジは思った。
壱成みたいな誰からも好意を寄せられるような人間なら、たくさん顔が良い人、優しい人が側にいるはずだ。
そんな人間を、壱成はこれまで秋幸の代わりとして抱いてきたはずだ。
なのに、秋幸みたいな愛らしさも、優しさも、明るさも、何一つ備わっていないこんな自分を好きになった壱成が良く分からなかった。
「目だって……青で気持ち悪くて……変だし……明るくないし根暗だし……一緒にいて楽しいって思えないよ……」
今まで誰かを楽しませた事は一度もない。ただ、声だけは仕事になれば明るく話せる。でもそれは、偽りの自分。キャラクターの声で、ユキジ自身の物ではない。だから、壱成に聞きたかった。どこが良いのか。
「絶対……秋幸君の代わりにもなれないよ……」
秋幸の代わりにもなれない。そう話す事自体が烏滸がましい。
「俺はお前を秋幸の代わりとしてなんか見てない」
「嘘。いいよ、嘘付かなくて……」
「嘘じゃねーよ。お前が秋幸の代わりなんて務まるわけがない。アイツはこれからも特別だ」
「……だよね」
「お前だって祝はこれからも特別だろ? 初恋なんてそんな簡単に忘れられるわけがない……」
「え……?」
「生まれて初めて知った人を愛する気持ちを、すぐに忘れる事はできない。一つの想い出として頭の片隅にずっと居続けるはずだ」
そう言われ、ユキジはそうだなと思った。
祝の事を前みたいに好きかと問われれば、ユキジは即答で違うと答えられる。でも、あの甘酸っぱい気持ちを忘れる事はできない。
祝が今のままで居続ける限り。
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