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3.思い掛けない存在-9
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そう思ったユキジは、なんだか申し訳なくなる。
容姿が母親似で女っぽいのが勘違いを生んでしまった。もし、自分が男らしい人間だったら、性別を間違う事は無かっただろう。
「クルミヤ……ユキジ……。キミが……オレの……」
「え……?」
ラウルが何かを言おうとした。でもそれは、監督の携帯が鳴った事によりその先を言う事は無かった。
「はいはーい。了解でーす。……あっ、ごめんね。これで解散にするね。明日からよろしく」
監督が携帯を閉じると、この場は解散になった。周りは売れっ子の人間ばかり。顔合わせに時間を掛けてなどいられないのだ。
壱成はこれから今月発売するCDのレコーディングがあるらしく、マネージャーと二人で慌てて部屋から出ようとしていた。けれど、出入り口で立ち止まり、こっちを見てきた。
「ユキジ」
そして、ユキジの名を呼んだ。
「な、なに?」
ユキジは突然名前を呼ばれ、ドキッとしてしまった。思わず顔に出そうになり、慌てて無表情を作る。
「またな」
「うっ、うん!」
でも、その一言で無表情は一瞬で消える。
忙しい中でも、そうやって個人的に挨拶を言われてしまうと駄目だ。
嬉しくて顔に出てしまう。
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