アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
*
「ありがとうございましたー」
店を後にして、ドアが閉まったところで小さくため息をつく。
帰る前に恋人から話があると呼び出され、カフェで別れ話を切り出されて一瞬で一人になった。
そのままふらふらと家の最寄り駅まで帰ってきて、レンタルビデオ店に誘われるように入って。
いろいろとみているうちに外はいつの間にかとっぷりと日が暮れて、街灯が灯る時間になっていた。
時計も見ずにそれほど長く店内を彷徨っていたのだ。
(ふらふら店内歩き回って……男同士のを借りて……。あの人絶対変に思っただろうな……)
- うわ、ごめん! ……大丈夫?
そんなことを考えながらぶつかった男の、耳に残るきれいな声と怪我をさせたのではないか、と心配そうな顔、自分に怪我がないことを知った時の優しそうな眼差しが脳裏に焼き付いて離れない。
だが、ふるふると頭を振ってその顔を振り払う。
(……きっとお腹すいてるんだ……。途中で何か食べるもの買って帰ろう……)
手にしたDVDの入っている袋を通勤かばんに入れて歩き出そうとした千尋の耳に、「あ、いた!」と先ほどの声が届く。
「ねえ! ねえってば! 待ってよそこの君っ」
まさか自分を呼び止めているとは知らない千尋は、「ねえ!」と再度後ろから声を掛けられその声が自分に向けられたものだと気がついた千尋はびくりと動きを止めてしまう。
「さっきぶつかったそこのスーツの君!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 40