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「はい、仕事に戻れ」
拭き終わると西島はまた怖い上司の顔に戻る。
「あ、あの、ありがとうございました」
碧は深々と頭を下げて、
「お、お先に失礼させていただきます」
と挨拶をして去って行った。
「あ~あ、碧ちゃん何かビビってたぞ!可愛い子をびびらせて楽しいか、ん?」
佐々木はからかうように西島の眉間を指さす。
「向こうが勝手にビビっているだけだ」
西島は上着を整えると、クレンジングと洗顔を佐々木に押しつけ、トイレを出た。
確かに碧は西島にビビっている。
オドオドして、
そんな姿見ていると子猫をイジメているような錯覚に陥り、胸が痛む。
それは佐々木にはバレたくない。
絶対に、
からかわれるから!!
そんな事を考えていたら自然と歩く足に力が入りカツカツと足音が廊下に響いた。
*****
「え~碧ちゃんメイク落としたの?可愛かったのに」
洗顔して戻って来た碧に女子社員はブーイング。
「何だよ碧、またメイクされたのか?」
碧に声を掛けてきたのは一緒に入社した斉藤。
斉藤と佐藤って発音似てるよな?って斉藤の方から話し掛けて来た。
都会に出てきたばかりの碧には知り合いなんているはずもなく、特に人見知りだから、声を掛けてくれるのは嬉しかった。
「碧で遊ぶな」
なんて庇ってくれる。
「で、俺とエッチな遊びとかしよーぜ」
と女子社員の中で一番可愛い子の肩に手を回す。
「ばーか」
斉藤は手を思いっきりつねられる。
チャラ男っぽい感じだけど、明るく社交的な彼は結構人気があった。
エッチな話も斉藤なら仕方ないと変な意味ではなく、受け入れられていて、碧は密かに羨ましく思っていた。
碧は女子社員に解放され、席に座る。
つい、西島の机がある方向を見てしまう。
まだ会議中。
トイレで会ったのは休憩中だったのだろう。
あんなに近くで西島を見た事が無かったからドキドキした碧。
部長は俳優さんみたいにカッコイい。
入社式の時に挨拶をした西島を見た新入女子社員達はざわついていた。
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