アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
真っ暗闇の箱庭
-
社会人×社会人
(咳、喘息)
例えるなら
狭い空間に閉じ込められて空気を奪われる感じ
朝方、
息苦しさに目を覚まし
上体を起こすと
吐き出される息は風の音のようにひゅーひゅーという音をたてて吐き出された
隣で眠る君を起こしそうで
げほげほと大きな音を立て漏れ出しそうになる咳を堪えようとするものの上手くいかず
控えめに咳をすればするほどだんだんと咳は強さを増してくる
「げほっ……げほげほ…げほげほっ………」
咳をして
息をして
息がし難くて
胸が苦しい
一時、落ち着きを見せて
はぁと息を吐くけれど
それは一瞬にしか過ぎず
ひゅーひゅーと鳴る息も
げほげほと溢れる咳も止まらない
「くる……しっ……げほげほっ……」
ぐっと胸元を握って咳を続けていると
さすがにどんな物音でも起きない君も目が覚めて
むくりと起き上がっては
隣で背を丸める僕に驚き
僕の背を撫でる
「ちょっ、なんで起こさないんだよ。」
「だっ……げほげほっ……て………げほっ……」
「あぁ、もう。話させてごめん。ちょっと待ってろ。」
君はそう言うと
ベッドから降りリビングへ向かう
何をしに行ったのか
僕のために行ってくれているのに
それは頭では分かっているのに
何か置き去りにされた感じがして悲しい
息がより一層し難くなる
咳が強さを増して
血でも吐いてしまうんじゃないかと思えるくらい苦しい
ーー暗闇に一人取り残される感覚
「どうどう…ほら、咥えろ。」
いつの間にか頬を伝っていた涙を拭き取り
君が僕の口にプラスチックの管を咥えさせる
アルミの管を押しぷしゅっと音がして
口の中に霧の薬が充満する
すうっとそれを吸って落ち着きを見せようとするが
咳はまだ続けば
どくどくと心臓が動きだすのも分かる
「はぁ……げほげほっ……げほっ……」
「落ち着け、落ち着け…」
君がそう言って僕の背を撫でる
呪文のように聞こえるその言葉
とても温かい
密閉された空間に空気が流し込まれる感じがする
気がついたら眠っていて
目を覚ますと
「落ち着いてよかった。」
君がそう言って僕の頬を撫でた
「ありがとう。」
僕はそう言って君の手のひらに口付けた
君に出会ってから
僕の空間は光りが満ち溢れ
澄んだ空気が流れている
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
65 / 143