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捨て猫
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高校生×社会人
(発熱、風邪)
どれくらいボクは此処にいるのだろう
キミと過ごしたこの場所
もう跡形は無くって
キミとの思い出の形なんてないけど
確かにそこには
キミとの思い出があった
ぼおっと眺めても
その場所が元に戻ることもなければ
キミがボクの元に戻ることもない
「くちっ……」
くしゃみが出た
ずずっと洟をすすっても
昔みたいに
心配してくれる人もいない
喉も痛いし、身体も痛い
どうしてこうなっちゃったんだろう…
悲しくて涙が出そうになる
でも、涙なんてもう流し続けてしまって
枯れてしまって流れることもない
ボクの涙の代わりに雨が降る
屋根もない場所だから
ボクはただ、ただ濡れるだけ
「何してるの⁇」
そんな声とともに
ボクの周りの雨がやんだ
声の方に目を向ければ
傘を持った男性が立っていて
物好きなものだ、なんて思ってしまう
「風邪、ひいちゃうよ⁇」
「………」
別に風邪なんてひいたっていい
「君、家は⁇」
「………」
そんなものとっくに捨てた…というより
捨てられた、が正しい
「んー、拾ってもいいかな⁇」
「…勝手に、すれば………」
「あ、喋れたんだ。じゃあ、遠慮なく。」
そう言って彼はボクを抱えて
ボクを家に招き入れた
暖かいお風呂に入れられて
ふわふわしたタオルに包まれて
石鹸の香りのするぶかぶかのシャツを着せられた
「くちっ……」
暖かい空間なのにぶるっとした
「あらら…雨に濡れて風邪ひいちゃったかな⁇」
そう言って彼はボクの額に額を寄せる
「あー、熱あるね……」
ボクを抱きしめベッドに沈める
彼がボクの元から離れていきそうになる
「いか、ない……で……」
ボクは気が付けば手を伸ばし
彼を求めていた
その声に彼が振り返る
「大丈夫だよ。どこにも行かない。ただ、体温計と冷えピタとってくるだけだから……」
「やっ、やだ……」
だってキミは待っててねって言ってた
言っていたのに
キミはあいつの元に消えた
ボクにはあいつの代わりができなかった
彼だって…ボクを捨てていくんだ
ベッドから降りようとするとふらっとしてずり落ちた
ぼてっと音がしたし、肩をぶつけたし、痛かった
けれど、それよりも彼がいなくなるのが嫌だった
「ちょっ、大丈夫か⁇」
落ちたボクに近づく彼
「大丈夫…じゃない……いかないで……ボクを…捨てないで……」
彼に手を伸ばし
彼を求めた
ぎゅっと彼を抱きしめる
彼はそれに応えてくれる
「分かった。分かった。いかないから、な。」
ぽんぽんと背を撫でてくれて
ボクを抱きしめて体温計と冷えピタを取りに行く
また、ベッドにボクを沈めて
体温計で熱を測り
冷えピタを額に貼ってくれる
ひんやりと気持ちがいい
「寝るまで繋いでてやるから、おやすみ。」
彼はそう言ってボクの手を握る
キミの温度が伝わって温かかった
傍に誰かがいるという安心感が嬉しかった
目が醒めると
頭はすっきりしていた
手はまだ彼にとって繋がれていて嬉しかった
「おはよう。気分、は⁇」
「別に…だい、じょう……ぶ……」
「そっか…じゃあ、飯作るから……って傍にいた方がいい⁇」
繋いだ手が離される
名残惜しかったけど
その手を離しても大丈夫だと思った
「大丈夫……」
きっと昨日は弱っていたんだ
だから、彼を求めた
「そか、安心しろ。俺は消えないから。」
彼はわしわしとボクの頭を撫でて台所に向かう
その言葉が暖かくってボクはとても安心した
彼ならキミの代わりになるだろう、か
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