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突然の不運
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大学生×社会人
(過呼吸、嘔吐)
「だから、ごめんって言ってるじゃん。」
夕食を済ませて家に帰る車の中で
彼と久しぶりに喧嘩をした
理由はデートの予定をたてていた日に予定を入れられたこと
仕事の予定だからしょうがないといったらしょうがないのだけれど
でも、その日はすごく楽しみにしていた日だから
「いいよ。別に。」
「いいって思ってないじゃん。」
「いいってば!!」
車から降りてマンションの入口に向かう
エントランスの戸のキーコードを乱暴に押して戸を開け
むすっとした状態で中に入る
エレベーターのボタンを押して
彼と目を合わせずにエレベーターを待つ
怒っていたってしょうがない
しょうがないのに怒りがおさまらない
エレベーターがつき乗り込む
会話はなくなった
いつもはエレベーターの中でべったりなのに
今日は端と端に乗って
少し悲しいし
狭い空間が苦手な僕は少しこの空間が怖かった
部屋の階を押すと
エレベーターの戸が閉じて
エレベーターが上昇を始める
少し息苦しくて胸元に手を当てる
彼がちらりと僕を見たのが分かる
けれど今、手を差し伸べても僕が拒否するのを分かっているから
何も言わない彼
がたんと突然、エレベーターが止まる
突然の振動にバランスが崩れがくんとなる
「「え??」」
二人が同時に驚きの声をあげる
どういうこと、だ??
緊急ボタンを押さなきゃ……と手を伸ばした時
ふっと電気も消えた
え……嘘…………
何……どうして、どう、し、て??
周りが見えない
此処が分からない
胸を鷲掴みされたかのように苦しい
「……っ…………」
頭がぐらぐらして
立つことができずに
僕はその場にしゃがみこむ
足だけで身体を支えることもできなくて
手を床につく
遠くで彼の声が聞こえる気がする
気がするのに何を言っているのか分からなければ
それは幻想の様にも聞こえる
苦しい、苦しい、苦しい
はっ、はっと空気を求めるように息をするのに
空気が全然入ってこずに
呼吸はただ早くなるばかり
手が痺れる
意識が薄れてくる
気持ちが、わる、い
「うっ……うえっ…………」
気が付けば勢いよくせり上がってきていた物をその場に戻した
口の中が苦い
「んっ……ぐっ…………おえっ……えっ…………」
口から次々と溢れたものが
ばしゃばしゃと床に叩きつけられる音がする
暗闇の中でどんな状態かは分からない
勢いよく戻されるから
きっとそこは一面大惨事だとは思う
床についた手にもそれがかかって生温かい
この状況がこわくて、苦しくて
わけが分からない
意識が遠のきそう……
いや、遠の……く……
ふらりと前に傾いた時
後ろに暖かいものを感じた気がした
いつも感じる匂いと暖かさ
きっと、彼
そう思うと飛びかけた意識が戻る
荒れた息が少しずつ元に戻ろうとするのが分かった
彼が傍にいるそれが僕にとって安心だった
呼吸が戻り
意識もはっきりしてきた
その瞬間ぱっと電気が点く
暗闇に眩い光
目が痛い
「あー、結構、吐いたな……」
電気が点いて目に見えた目の前に広がる吐物
胃の中身以上に吐いたのではないかと思えるほど床を汚している
「………っ…」
涙が溢れてきた
「泣くな、泣くな……怖かったな…ごめんな、傍にいてやんなくて……」
ぽんぽんと頭を撫でて彼がいう
もうホントだよ……
「こわっ、こわかった……」
僕は涙を汚れた手で拭いながら
彼に縋りよる
「あっ、こら……擦らない、顔汚れるだろ。」
そう言って彼はポケットからハンカチを出して
僕の手と口を拭ってくれた
そして彼は手持ちのタオルで汚れた床をとりあえず拭いた
部屋の階に着くと
ふらつく僕をエレベーターから降ろして
部屋へと歩かせる
部屋に入ると僕をソファに寝かせ
エレベーターをきれいにしてくるから、と掃除道具を片手にでていった
そして、戻ってくると
「その日の昼はダメになったけど、夜にデート、な……」
申し訳なさそうにそう彼が言った
騒動のせいで喧嘩のことなんて僕は忘れていたのに
彼は覚えていてくれたのかと思うと嬉しかった
当初の目的のデートはできないだろう
でも、その日にデートができる
「うん。約束。」
嬉しくて僕は君に抱きつくとそう言った
そして心に誓ったのは
エレベーターに乗る前には喧嘩なんてしない
彼が謝ったらそれで許す
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