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4月28日『ヨツバの日』(出会い編)③
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無視をして、帰ろうと思った。
すっと滑った視線の先で、隣の男が、ヨツバを見ていた。
隣でヨツバを見ていたのは、優しそうな、ダンディな感じの男。
僕よりも断然、そっちの方がいい男だ。
見かけだけじゃない。
きっと、中身も、僕なんかより何千倍もマシだろう……。
ヨツバは、隣の男の視線に気づくと、さっとNo.を隠した。
隠したところで、黒マスクに聞けば、簡単に教えてくれる。
そう。意味のない行動だ。
ヨツバは隣からの視線を避けるように、少し場所を移動し、再び、僕にNo.をアピールする。
「俺、あんたがいい。あんたに買われたいっ」
眉根を寄せる僕に、ヨツバは、買って欲しいとアピールを繰り返す。
「何で…?」
余りにも僕に執着するヨツバの態度に、言葉が口を衝いて出た。
会って…、見かけて、たった数分。
言葉だって交わしていない。
そんな僕に執着する彼が、不思議で仕方なかった。
「何で、そんなに僕に、執着するんですか?」
ガラス越しに穏やかな声で訪ねる僕に、ヨツバは、にまっとした笑みを浮かべた。
「勘!」
あまりにも自信たっぷりに、根拠のない言葉を吐かれた僕は、ふっと笑みを零していた。
「ヨツバは幸せの象徴だよ! あんたも幸せに出来るよ! 俺、あんたのコト、幸せにする自信あるよ!」
笑んだ僕に、ヨツバは、ここぞとばかりにゴリ押しする。
「それも君の勘?」
クスクスと笑いながら紡ぐ僕の言葉に、ヨツバは、にやりと笑む。
「俺の勘、当たるんだよ! 俺、すげぇんだ!」
顔一杯の笑顔を湛え、太陽のように、ヨツバは笑った。
その笑顔は、真っ黒に染まった僕の心に一筋の光を灯す。
もしかして。このコといたら……。
僕も少しは、幸福感を得られるのだろうか。
愛される幸せを感じられるだろうか。
そんな、細く儚い光の糸が、目の前に伸びてきた気がした。
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