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4月28日『ヨツバの日』(出会い編)⑦【 END 】
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「りゅんさま、なんで笑ってるの?」
俺の問いに、吏弓は、ふふっと小さく笑い、口を開いた。
「初めて会った時のコト、思い出してました」
俺と吏弓の目の前には、3本の蝋燭が炎を揺らすケーキ。
4月28日。
2年前の今日。俺と吏弓は、出会ったんだ。
ガラス越しに。
単なる直感だった。
ぎらりと一瞬だけ光った吏弓の視線。
それに俺だけが、気づいたんだ。
目の奥に潜む冷たい影。
威嚇するように、歪む表面。
心の奥底で、蠢く本体。
俺は、吏弓の奥底を覗いてみたくなる。
穏やかな笑みの裏。優しげな瞳の奥。
吏弓は獰猛な獣を飼っている。
いつしか折れ曲がった愛情は、優しく伝えるコトを忘れて。
欲望の、本能の、赴くままに、牙となる。
刺さる牙。痛みと苦しさを伴う愛は、甘やかされる幸せとは違う。
でも、俺を……求めてくれる。
それでも、俺を愛してくれているコトを教えてくれる。
伝わる愛情に、間違いはなくて。
ここが俺の『居場所』だと、苦痛と共に教えてくれる。
何もないとこには、何も生まれない。
痛みでも、苦痛でも、向く想いが存在するから、俺の『居場所』も生まれるんだ。
だから、俺は、ここに居る。
吏弓の傍で、笑ってられる。
「これからも、よろしくお願いしまっす!」
俺は、目の前で揺らぐ炎を、ふっと一気に吹き消した。
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