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見舞い。
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アキくんは息を切らして言った。
「光輔、無事か⁉︎」
「何言ってんのアキくん……ただの風邪だってば」
そう言うと、はーっと大きく息を吐く。何なの一体?
呆れて見ていると、その視線に気づいたアキくんが照れくさそうに言った。
「いや、おれ、風邪なんて引いたことないからさー……光輔が休んでるって聞いて、何が起こったのかと思って……」
「あのね、普通の人間はアキくんと違って時々風邪くらい引くんだよ」
と言いながらも、心配してくれたことをなんか嬉しく感じる俺は末期だ。
……そういや、昔からアキくんってこうだったかも。俺が保育園とか小学校とか休むと、必ず見舞いに来て「大丈夫?」って聞かれた。久しくそういう機会が無かったから忘れてたけど。
「あ、そうだ、なんかノート預かって来たぞ。翔也から。明日返せだって」
「中川から?……明日、お礼言っとかないと」
渡されたノート数冊をぱらぱらめくる。あ、今日数学あったんだ。休まなきゃ良かった。
「それより光輔、聞けよ。今日も篠田がさあ……」
アキくんと嫌い合っている二年生の悪口を適当に流しつつ、体をベッドから起こした。勉強机に座って、今日の授業内容を自分のノートに写す。しっかし中川、字ー綺麗だなー。
「…………」
「……ん?アキくんどうしたの?」
不意に部屋に訪れた沈黙。それを不審に思って顔を上げると、アキくんは気まずそうな顔をしていた。
「……何か、あった?」
「いや、これ……光輔に言うか迷ってたんだけど」
「何?言うの迷うって?俺、何かしたっけ」
「や、そーゆーことじゃねーんだけど……」
どうにも歯切れの悪い口調。でも俺がじっと見ていると、観念したのか「ま、いいよな」と言った。
「や、実はさあ、石川さんが」
「石川さんって誰?」
「おまっ……覚えてねーのかよ!葉月の友達だって、一昨日会ったじゃん!」
“葉月”という名前にずきりとしながらも、「ああ」と頷く。一緒にいた背の高い人か。
「その石川さんがどうしたの?」
「石川さんが、その……」
アキくんが、言った。
「おまえのこと、気に入ったらしくて。付き合ってみねぇ?」
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