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第一章:愛しき悪魔のおそ松兄さん6
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side十四松
「やめて!おそ松兄さん!」
「おそ松っ!」
僕とカラ松兄さんは、おそ松兄さんを止めようと必死だった。
「ぎゃははっ!」
不気味な声を出して笑うおそ松兄さんは、いつもの、僕達が知っている兄さんとは明らかに違う。
このところ、毎日何かが壊れる。
始めはコップ等、小さい物だった。
それがだんだん大きなものへと移行していった。
始めは何かの偶然かと思ったけど、違った。
おそ松兄さんが…いや、もう一人の、悪魔のおそ松兄さんが壊していたんだ。
初めてもう一人の兄さんを見た時には、卒倒しそうになった。
目は死んで、無表情なのに、口元だけは笑い、聞いたことのない不気味な笑い声を立てながら、素手で物を破壊していく…。
壊し終わると途端にいつもの兄さんに戻る。
いつもの兄さんには、もう一人の兄さんの記憶がないようで、いつも「あれ?何で壊れているの?」なんて首を傾げたりしていた。
僕達には「それは、おそ松兄さんが壊した」と言う勇気はなかった。
言ってしまったら、おそ松兄さん自身が壊れてしまいそうな気がしたから。
今日、兄さんはテレビを壊したいらしい。
テレビは流石にまずい。
こんなものを素手で破壊したら、おそ松兄さんが怪我をするに決まっている。
だから、一生懸命に止めようとしているんだけど、今の兄さんには、僕達の声は聞こえないみたいだ。
「いだああっ!」
「十四松っ!?」
おそ松兄さんが、尖った牙で僕の腕に噛み付いた。
血が吹き出して、びっくりしたカラ松兄さんの力が一瞬抜けた隙に、おそ松兄さんはカラ松兄さんを蹴り飛ばし、テレビに手を掛けた。
怯えているトッティも、唖然とする一松兄さんも、泣き叫ぶチョロ松兄さんも、何も出来ない程あっと言う間に、テレビは破壊されていった。
おそ松兄さんは無傷で。
「あれ…?テレビ壊れてる…」
やっと、いつものおそ松兄さんが戻ってきた。
「何で…十四松!?どうしたの!?その怪我?」
振り向いたおそ松兄さんは、血が滲む僕の腕を真っ先に視界に入れた。
「大丈夫?見せて」
「あ…ダメ」
「どうして?ちゃんと手当てしないと…」
傷口を見た兄さんは絶句した。
そこには噛み跡、犬猫のものとは明らかに違う牙の跡があったのだから。
「これって…俺がやったの…?」
僕は答えられないでいた。
「そうだよ。おそ松兄さんが噛み付いたんだ」
チョロ松兄さんの絞りだしたような声が聞こえた。
「そっか…。ごめんな…。十四松」
おそ松兄さんはそう言うと立ち上がって、部屋を出て行った。
「おそ松っ!」
カラ松兄さんが呼び止めたけれど、おそ松兄さんは振り返えらなかった。
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