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第三章:目覚めし悪魔のおそ松兄さん5
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sideカラ松
おそ松は、俺達よりも先に来ていた。
俯き加減にブランコに独り腰掛け、キイ…キイ…と小さく漕いでいる。
その姿は、ひどく悲しげに見えた。
けれども、俺達を見つけると、直ぐにキッと睨みつける目に変わった。
「昨日は、よくも酷い目に合わせてくれたな!」
おそ松が右手を掲げると、その手に赤いモヤモヤしたものが集まり出し、手の平より少し多い塊になった。
それが炎だと分かった時には、その塊をこっちに発射させていた。
「うぎゃああっ!」
俺達は各々に叫びながら、なんとか必死に避けた。
伏せた際に隅むいた手の平が痛む。
「あーらー。避けちゃって☆」
「おそ松っ!お前何してくれてんだ!」
俺の抗議に、おそ松は心底楽しそうに笑った。
「だから言ったでしょ。あの世行きの切符をあげるって。いつもは片道分だけど、今日はサービスして往復切符あげちゃう☆」
しかし、その次の瞬間に一変、おそ松は、さぁーっと顔色を青く染めた。
「見ぃつけた~☆どこに行ってたんですが?悪魔さん?貴方まだ覚醒し切ってないんですから」
俺達の後方から、俺達を追い越すように、ふわりと宙からおそ松の前に進み出たのは、顔の上半分を白い仮面で隠した道化師風の男だった。
「よ…寄るなよぉ…」
一気に情けない声になってしまったおそ松は後去っている。
「ダメですよ~。貴方の邪気は、まだ封じられた状態なんですから。今直ぐに解放してあげますからね☆」
楽しげに笑う男に、おそ松は絶望的な表情を浮かべた。
「要らないって…あっ!」
躓いて尻餅を着いたおそ松を、男は逃がさなかった。
「いやだっ!」
男に押さえ付けなれながらも、バタバタと暴れるおそ松。
俺はそんなおそ松と目が合った。
「助けて…」
その瞳は、水没していた。
「おそ松っ!」
俺は男に飛び掛かろうとして、何かに顔を打ち付けた。
まただ。
あの時と同じだ。
透明な薄くて硬い壁が出来ている。
トド松もチョロ松も一松も、壁に打ち付けた頭や鼻を、しかめ面で押さえてる。
十四松に至っては、ぶつかった弾みで、公園入り口近くまで飛ばされていった。
「おそ松っ!!」
男に何をされたのか、分からない。
でも、おそ松の四肢の力が抜けて、ぐったりしているように見えた。
すごく胸騒ぎがする…。
男がおそ松の上から退くと、おそ松を見下ろし、ほくそ笑んだ。
「ほら、出来上がり…☆」
そして、くるりと俺達の方を向き直ると、「貴方達の大好きなお兄さんは、今、私の物になりましたよ」とニタリと薄気味悪く笑った。
瞬間、背筋がぞわっとするのを覚えた。
「さぁ!悪魔さん!弟さん達にあの世行きの片道切符を差し上げて下さいっ!」
ゆらりと立ち上がったおそ松は、目付きが違った。
息遣いが違った。
おそ松の身体から、どす黒い何かが立ち上るような雰囲気。
それは、俺に「変わらなくていい」と言ってくれたおそ松とは、全くの別物にしか思えなかった。
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