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第三章:目覚めし悪魔のおそ松兄さん9
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sideチョロ松
僕は走った。
死神の亜空間の裏口から出してもらい、悪魔が居る表へ。
記憶を共存させられるのは五分だけだから。
「悪魔っ!」
女神の大好きな悪魔は、そこに居た。
亜空間の入り口に爪を立てていた。
僕の声に振り返ったその表情は、女神が知っているものよりも、厳しく、険しく、どこか苦しげだった。
「女神様…女神様なの…?女神様っ!!」
悪魔は凄まじい勢いで、僕に向ってダイブしてきた。
危うく受け止め切れずに、転倒しそうになるのをなんとか堪えて、抱き締めてやると、悪魔の体から立ち昇っていた邪気が、ゆっくり途切れていくのが分かった。
「やっと会えた…ねぇ?帰ろうよ。湖に帰ろ?」
「湖は、もうないんだよ」
「え…」
あまりにも幸せそうに笑うから、こんなことを告げるのは本当に辛い。
僕を見上げる瞳は、俄かに揺れている。
「湖は無くなったんだよ」
「でも…女神様…ここに居る」
「僕はね、チョロ松だよ」
「やだっ!違うもん!女神様だもん!」
悪魔は、僕の胸に顔を埋めた。
僕はその震えている背中をポンポンと撫でてやった。
「もういいんだよ。彼らは幸せだったんだ。だから今ここに『兄さんと僕』が居るんだよ。僕らは『今』を生きなきゃ。僕は…チョロ松は、おそ松兄さんの居ない『今』なんて生きたくないよ…。早く戻って来て、おそ松兄さん」
「チョロ…松…」
顔を上げたおそ松兄さんの瞳には、やっぱり雫が溜まっていた。
その瞳は、さっきまでここにいた「悪魔」ではなく、確かに「おそ松兄さん」のものだった。
「一緒に戻ろうね…」
――あ…五分経つんだ。
意識がぼんやりしてきた。
「チョロ松!」
おそ松兄さんの声が聞こえた気がした…
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