アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
20別離
-
「お前に頼みたいことがある」
友二人に頼まれた事
「女…というか恋人を繋ぎとめるにはどうしたら良い?」
色恋に疎く
世間知らずな坊っちゃん二人が真剣に聞いて来る姿は可愛らしくもあり
そんなに夢中にさせたあの巫子達が憎かった
自分も巫子に溺れながら身勝手な話ではあるが
友を奪われた気がした
「将軍!大変です!」
「どうした?」
度胸試しに行った兵士を探しに行かせようとした白竜の前に腕を斬られた兵士が飛び込んできた
「巫子様の警備をしていた者か!何があった!」
「い…異界の住人が!紅様の屋敷に!」
「…っ!紅!」
「目を閉じよ人間」
「…っ!」
思わず目を固く閉じる
「愚か者!」
どしゅっ
「が…ぁ…」
「王の命に逆らいおって!恥を知れ!」
「夏呂久…」
目を開ければ
異界の住人は夏呂久に腹を裂かれていた
「申し訳ございません!」
床に額を擦り付け
謝罪する
「このような失態を晒し、白竜様との約束迄反古にしてしまいました」
「いや…助かった…」
未だ体の震えが止まらない紅に
「紅様!ご無事ですか?」
黒が兵士を連れ
現れた
「将軍!黒准将より巫女様はご無事だと連絡が入りました!ただ…使用人とおぼしき者達が死んでいたとの事です」
「…そうか…使用人には気の毒だった…」
紅の無事に安堵しながらも
名も無き使用人の死を悔やむ
「とにかく紅様がご無事で良かった」
複雑な表情を見せる凰の顔を見らずに白竜に話しかける
「ああ…後は…」
「将軍!鳳が戻ってきました!」
「分かった!今いく!」
「巫女様。ご無事ですか?」
「ああ。夏呂久殿が助けてくれた。だからその殺気をしまってくれまいか」
「この度は誠に申し訳ありません!と言っても容赦はされないでしょうね」
夏呂久が首を差し出す
「どうぞ。兄は私の首を届けられても微塵も感じません」
「ああ。お望みとあれば」
腰の剣を抜く
「短い間でしたが…楽しゅうございました」
勢いよく剣が降り下ろされた
「将軍…緑様…」
泥と血にまみれ
自身も傷だらけの鳳がよろけながら現れる
「規律を破っておきながら良くも姿を見せられたな!」
怒りの翠が釵を構える
「翠!鳳は悪くない!またあいつらの仕業だろ」
「緑!今はそんな場合じゃない!」
庇う緑を押し退け
「西の森に異界の住人が出現し仲間が襲われました!あそこは中立地域の筈!見張りも襲われて…喰われ…ました」
涙を流し
悔しげに呻く
「私は無力です」
槍に刺さっていたのは
「異界の住人…見たことがない形状だ」
「翠!」
「応!」
異界の住人を見た翠が呟き
白竜も声を上げる
「これは緊急事態だ!鳳達の行いは許されることではないがそのお陰で敵襲を知ることが出来た!急いで出陣準備だ!」
「はっ!至急集めます!」
「俺も集めてきます!」
「頼んだぞ!」
部下と凰が兵を呼びに行く
「鳳!よく知らせてくれた!だが軍規を乱した罰は必ず受けてもらう!それまで休め!」
「はい」
「鳳!」
よろけながら歩く鳳を支える
「ありがとうございます」
「もう敬語なんて使わなくて良いよ、鳳。さっきも緑って呼んでくれただろ?」
「申し訳ありません…」
「僕達は仲間で同じ兵士だ」
始めて出会ったときからずっと話しかけてくれた
皆が敬遠する自分に笑いかけてくれた
「はい、緑。ちょっと疲れた。肩を貸してくれる」
「勿論!」
横に回ろうとしたが
鳳は前に傾く
「つか…れたぁ…」
ずるっ
「ほ…ぅ…?」
鳳の首が
腕が
足がずれ
ごとんっ
鳳の生首が落ちる
「え…?」
「…っ!」
「ぎぃやっはははははあーっ!」
鳳の槍に刺さっていた異界の住人が起き上がり
笑い声を上げる
「誰がお前ごときにやられるかよぶぅわーかぁ!死んだ振りをしていただけさ!」
「っ!」
呆然と鳳を見つめる緑に
異界の住人が尚も笑う
「聞いての通りだ!あの森は…いやこの世界は我々のも…はれ…?」
異界の住人の視線がずれていく
「愚か者が!お前は天敵の巣に入り込んだのだ!」
カチンッ
白竜が剣を納めると
異界の住人がバラバラになり
肉塊となった
「緑!泣いている暇はない!」
「はい!」
涙を拭い
「我が兵士達を侮辱し殺害した罪!命を持って償って貰うぞ!」
緑の首の逆鱗が強く輝く
「応!一匹残らず…」
喰ってやる!
「くっ!」
「我が不肖の義弟(おとうと)なれど殺されては敵いません」
夏呂久と黒の間に突如入った剣
剣の持ち主は若い女
「義姉上(あねうえ)!」
「誰だ!」
再度剣を構える
「異界の住人か?」
「秋桜(しゅうおう)と申します。異界の住人の王の妻です」
「義姉上…どういうことですか?」
怒りで震える夏呂久を無表情で見つめる
「異界の住人は兄上の命令で控えている筈!」
「我らが王が納める異界の住人ではありません。新たな勢力が現れたようです」
「それは…一体…?」
「我が民達も殺され、拐われており、我が王は酷く悲しんでおられます」
「信用しろと言うのか?」
黒の首の逆鱗が光る
「信用しろとは言いません。ですがいずれわかりましょう。それまで義弟をお側に置いてやって下さい」
秋花は頭を下げ
消えた
「申し訳ありません…黒様。紅様」
再度謝罪を口にする
「もういい。後は白竜が決めることだ」
「御意」
「それより紅様…その有り様は…」
紅の着物ははだけ
内股からは白濁の液が流れ落ちる
「こそ泥の仕業だ…そこの白竜の使用人が助けてくれたが、どちらも殺された」
「そうでしたか。白竜の屋敷にお送りしましょう。この有り様ではお体を清めるのは無理です」
「そうだな。でも私の体を清めるのは楊に頼んで欲しい」
「はい」
「こんな穢れた姿は楊以外には見られたくない」
「紅が呼んでいる?何かあったのですか?」
屋敷で本を読んでいた楊に使者が伝える
「少し時間を下さいますか?身支度をします」
私室に戻り
着物の帯を緩めると
何処からか手が伸び
着物を差し出す
「失敗したのですね」
「申し訳ありません」
異界の住人が跪き謝罪する
「たかが子供を一人殺すのに何を手間取っているのですか?」
「何分頭の足りない者が多くて」
「言い訳は無用。あなた方のせいでもうあそこは警備が強くなるでしょう」
首飾りを付け
鏡を見て笑う
「まあ人に頼った僕が悪かったのです」
ばんっ
鏡を叩き
砕く
「悪運の強い子だ」
「紅!」
討伐を終え
白竜が楊に体を清められた紅を抱き締める
「白竜。無事で良かった」
「それはこちらの台詞だ!」
いつになく激しい白竜に
「すまない」
紅が謝罪する
「すみません。今までとは違う異界の住人が現れ、丁や部下が…」
俯く白竜の背中を撫でる
「俺は弱い」
「君は強い…」
心優しい王は全てを背負う
「私は生きている」
優しい王のためについた嘘
「君の優しさのお陰で丁は私を守って死んだ」
「俺はもっと強くなります」
紅の胸に顔を埋め
肩を震わせた
「僕は強くなる!」
森で兵士を喰らっていた異界の住人を退治した緑は涙を流しながら宣言する
「もうこんな思いは嫌だ!」
泣きながら宣言する緑を抱き締める
「俺もあの戦でそう思った。今のお前と同じ思いだった」
自分が強ければ
あの心優しい王はあんな辛い思いをせず
あの堕落した男に平伏すことは無かった
「強くなれ緑」
今度こそ
「あの男の首を取れるほどに強くなれ!」
あの心優しき王の苦痛を取り除いてくれ!
続く
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 53