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29変化
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まるであの日の様だった
幼い緑を抱えて現れた翠
「俺の弟だ」
逞しい腕の中すうすうと寝息を立てる緑をいとおしそうに眺めていた
弟思いで優しくも厳しい兄
そんな翠が
今、成長した緑の腕の中で頼りなく小さくなっていた
「す…翠…」
意識のない翠の頬に触れる
ひんやりと冷たくも
息はあった
「翠が演習の後、桜に呼ばれて二人で話していたら凄い悲鳴が聞こえて…」
部屋に飛び込むと
翠が桜に宝玉を奪われ
翠は体が縮み
意識を失っていたと言う
「桜は奪った宝玉を食うのに夢中になっていたから、僕は翠を抱えて逃げました…」
桜の身体中に鱗が生え
大蛇のようになっていき
「異界の住人のようになってしまった桜が怖くて…」
逃げるしかなかったと告白する
「今回のお前の判断は正しい!そのままたたかえばお前の宝玉も奪われ、翠も死んでいた」
緑の頭を撫で笑いかける
「お前はここで巫子と翠を守れ。桜様…いやあの化け物は俺達で捕らえる」
剣を握りしめる
「巫子と言えど俺の友を傷付けた奴は許さない!」
「翠…翠…」
「良いよ桜。俺はお前の竜だ」
髪をほどき我が身を差し出した翠
ずりゅっ
「あぎ…」
喉に手を入れ宝玉を抜き取る
「ぐう…あ…」
激しい痛みと苦しみ
我慢しきれずに
「いぎゃあああああああーっ!」
翠は悲鳴を上げのたうち回る
「翠…」
翡翠のように輝く宝玉は甘い香りを放ち
しゃぐっ
「ああああああっ!」
固そうに見えたそれは
一口かじればホロホロと砕け
ザクロのように甘酸っぱく美味なる物であった
翠が苦しむ声が聞こえながらもそれは止められず
「がああああああっ!」
体が火照り
ミシミシと音を立て軋む関節の痛みと
燃えるような熱さに苦しみもがいている隙に
「翠!」
緑に翠を拐われた
「翠…翠を返せ…翠は私のものだ!」
翡翠のような鱗を纏わせ下半身が蛇と化した桜が乗り込んできた
「緑!翠をどこにやった!翠を連れてこい!」
桜の瞳が輝く
どくんっ
「あ…」
「どうしました?」
「喉が熱い」
逆鱗が輝き
勝手に体が動く
「駄目…」
「翠を…僕の元に…」
意識のない翠を抱える緑に
「すみません!」
楊が緑の喉に指を入れる
「あう…」
「少し苦しいでしょうが我慢してください」
ズブッ
「あああっ!」
喉の中から一匹の蛇を引きずり出す
「こいつを仕込まれていたのか」
紅が蛇を踏み潰す
「君は兄さんを守ってあげるんだ」
「紅達は?」
「僕たちも行きます。白竜様達の手助けが出来るかもしれない」
「でも」
「私たちなら大丈夫」
頭を乱暴に撫で
「家族を守るのも君の役目だ」
外に飛び出していく
「おぅ…」
涙を流す翠に
「兄さん」
翠は強く抱き締めた
「桜様!ここは殿中です!お静まり下さい!」
白竜が立ちふさがり
剣を構える
「これ以上ここを乱すならばあなたと言えど容赦しない!」
少し離れたところでは黒が弓を構え
弦を引き絞る
「あれが桜だと?化け物じゃないか…」
急所を狙い
矢を放つ
「小癪な!」
尾で矢を弾きそのまま尾で白竜を弾く
「ぐう…」
尾を受け止め懐に飛びかかるも
ひゅっ
素早く避ける
「くそっ!」
舌打ちし
構える
「白!この化け物は捕らえるのは無理だ!殺そう!」
「黒」
弓を構えたまま白竜を守る
「僕を殺して翠を奪う気か?」
琥珀の瞳がギョロリと黒を捉える
「お前の様な化け物に友を奪われてたまるか!」
矢を3本纏めて放つ
「ぎゃっ!」
1本避け損ない
肩を射ぬかれ
桜は悲鳴を上げる
「今だ!捕らえよ!」
「応!」
兵士が複数で鎖を使い
拘束する
「翠!翠!」
もがき翠を求める桜に
「往生際が悪いですよ桜」
「君は罪人だ」
紅と楊が蛟を使い
更に拘束を強める
「さあ白竜」
「はい。この者を地下牢へ!」
兵士が桜を連行する
「白竜!僕はお前を許さない!絶対に…」
怒りの瞳に
「俺は家族が何より大切だ!恨むなら俺だけを存分に恨め!」
白竜は拳を握りしめた
「う…桜…」
「すみません。俺です」
「白…」
目を覚ました翠が伸ばした自分の手の小ささに目を見開く
「翠様。着替えをお持ちし…急に動いてはいけません!」
起き上がり姿見を見る
「………」
自分の姿にぺたりと座り込む
「翠様!」
「大丈夫ですか?」
二人で助け起こす
「は…はは…何て様だ」
一人笑う翠の声は幼く
「これでは誰も守れない」
蹲り泣いた
「翠。俺達が居ます」
「僕もいる」
幼い体を助け起こす
「兄さんはずっと僕を守ってくれたでしょう。今度は僕が守る」
「翠、お前も大切な家族だ。どんな姿になってもお前は強くて頼もしい俺の友です」
「白…緑」
「黒、怪我は大丈夫ですか?」
「怪我はしていないので大丈夫です」
黒を労る楊を横目で見ながら
「これから桜はどうなる?」
桜の身を案じる
「さあ?白竜様の部下の御身を傷付け、更に白竜様と僕の大事な黒を襲った。これは重大な罪です」
「ふうん。君でも怒る事があるんだね」
「当たり前です。僕はあなたが思うより黒が大切なんです」
黒を抱き締める
「黒に何かあったら僕は生きていけない」
「ふん!私達の絆はどうでもいいんだね。私達は共に戦禍を逃れ、長い間一緒に過ごしていたのに」
「僕はあなたのように情に深くはありません」
地下牢
「巫子様!ここは危険です!」
地下に降りてきた紅に
兵士が止めるも
「私が一緒に居る。ならば安心であろう?」
桐が付き添い
「桐殿。ではくれぐれもお気をつけて」
兵士は渋々通した
「桜」
「紅、君達か?僕が緑に仕込んだものを潰したのは」
「ああ。あんなものを仕込んで。あの子は君のものではない」
「ちっ!」
「それより君に聞きたい。何故こんなことをした?」
「君には一生分かるまいよ」
桜は笑う
「大切な人が他の男に抱かれても平気でいられるお前には一生分からんよ坊や!」
狂ったように笑う桜に
背を向け地下を出る
「翠は僕のモノだ!僕だけの竜だ!誰にも渡さない!これこそが!」
本当の愛だ!
「これは僕が以前着ていたものですね」
天狗に着替えを手伝ってもらい
髪を整えた翠が皆の前に現れる
「懐かしいです
翠に初めて出会ったときもこの歳でした」
白竜が笑いかけるも翠は俯いたままで
「世話をかけてすまない」
申し訳なさそうに呟く
「お前のせいではないだろう。いい加減顔を上げろ!」
髪をぐしゃりとかきみだし
肩を組む
「子供の姿でも一般の兵士には負けん。お前はまだ戦える。異界の住人にも勝てる」
「ああ…それより桜は?桜は無事か?あの時すさまじい悲鳴が聞こえた。桜は生きているのか?」
自分の身より桜を呼ぶ翠に
「あの化け物は忘れろ」
黒は厳しい眼差しを見せる
「黒」
「翠、桜はあなたの宝玉を食らって異形の姿となりました。そして…緑にも小さな蛇を仕込み操っていた。俺の大切な家族を傷付けた。これは重罪です」
「白…俺は…」
「翠様。お疲れでしょう?ひとまずお食事を召し上がってお休みください」
「昔みたいに皆で寝ますか?」
「お前が寝たいだけだろう?」
翠が笑い
「分かりましたか?」
白竜も笑う
「いつまでたっても白は白だ」
翠の笑顔に黒と緑も安堵する
夜
緑と一緒に眠る翠から離れ
食堂で話をする
「あれはいったいどう言うことだ?」
「隠していても仕方ありません。あれは巫子に力を奪われた者の姿です」
「巫子が竜を食うのか?それ以前に宝玉をいとも容易く奪えるのか?」
「はい。本来宝玉は逆鱗に守られていますが巫子は竜を支配するもの。逆鱗は意味がなく。竜の力を奪います」
「お前は知っていたのだな」
「はい。代々白竜にのみ伝わる書物に書かれてありました」
一冊の本を出す
「宮殿に残っていたものを桜様が見てしまったようです」
「そうか」
黒はため息を吐く
「これが戦火を逃れ、巫子の手に渡っていたのも先代の呪いなのかもしれません」
「そんなの!俺が蹴散らしてやる!俺達の白竜はお前だ!誰も認めなくても俺達が命がかける白竜はお前だ」
「ありがとう…っ!」
「この気配!」
ずりゅっ
ずりゅっ
「翠…翠…」
何かが這いずる音に
翠を呼ぶ声
「お…う?」
「翠!」
緑が翠を庇い
身構える
「翠。迎えに来たよ」
蠢く蛇の下半身
鱗に身を包み
「紅!」
意識のない紅を尾で巻き付けた桜が現れた
「さあ行こう。僕の可愛い翠」
続く
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