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律郎「私、小林の上司で藤田と申します」
名刺を差し出す。
一度名刺を受取ってから近くにある
机から 仁も名刺を持ってきて渡す。
仁「藤田、りつろう…さん?」
律郎「いえ、りつお と読みます」
仁「りつおさん…」
律郎「あの、失礼ですが大塚さんお年は?」
仁「え?」
律郎「随分お若いのにこんな立派な工房を構えていらっしゃるので」
仁「年は今年で30です」
小林「ええっ!?絶対年下だと思ってたのに」
思わず声を上げる小林に
目でたしなめる律郎。微笑む仁。
仁「童顔っていうか遺伝っていうか…いまだ学生に見られますね。両親も年より若く見られること多いですし。工房は条件をクリアすれば補助金付きで町が貸してくれるんです。自分1人で立てたわけではないので…」
律郎(モノ) ---〝りつろう〟わざと間違えてるのか?
それとも もう俺を記憶から消し去ったのか---
テーブルの上、ガラスコップに
入った飲物が置かれる。
仁「どうぞ」
律郎「・・・ 」
小林「おそれいります。…これ、大塚さんが作ったんですか?」
仁「はい」
小林「へぇー、素朴なカンジ、いーですねぇ」
仁「見た目より、口当たりの良さにこだわった品なんです」
小林「口当たり…」
仁は初対面の人間に接するような、
あたりさわりのない対応。
動揺する素振りは微塵も見せない。
改めてお詫びをする律郎と小林。
律郎「では、自転車はこちらで弁償させていただきます。できれば明日にでも病院に行っていただき、念のため検査をしていただきたいと思いまして。後日になりますが、検査費はこちらからお出しいたします」
仁「尻もちついた程度で頭打っていませんし、骨折してたら今頃こんな所でのんびりしてませんよ。大丈
夫です。そんなに気遣っていただかなくても」
律郎「いえ、車との接触ですし、検査で異常なしと分かれば我々も安心できます」
仁「そうですか…では明日病院で検査受けてきますので」
律郎「本当に申し訳ありません」
要件が済み、引き上げる律郎、小林。
駐車場まで来ると仁が走って
追いかけてくる。
仁「あっ…あの、これ…ボールペン…ないと、やっぱり困ると思って…」
律郎が忘れたボールペンを手渡す。
律郎「申し訳ありません。わざわざありがとうございます」
仁「たかがボールペン、されどボールペンです」
--回想--
仁「たかがボールペン、されどボールペンだ!おれはこのメーカー以外のものは使わないぞ!!」
律郎「ボールペンなんてどれも同じだろ」
仁「同じじゃねーよ!!」
--回想終了--
昔を思い出し、ふっと笑う律郎。
--回想--
仁「じゃーん!!見てくれよ。一目ボレで買ったんだ。いーだろー。セクシーだろー」
得意気にコートを見せる仁。
律郎「どこがセクシーだ」
仁「わかんねーかなー?このライン」
着てポーズをとる。
--回想終了--
10年前に買ったコートを今も着て、
目の前にいる仁。
律郎(いっそのこと、こいつが記憶喪失になっていて何もかも忘れた状態でやり直せたら…)
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