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--回想 5年前--
駅前商店街。
ベンチにぼんやり坐っている仁。
コートを着て傍らに自転車、
植物の鉢植えをビニール袋に入れた物を
ハンドル部分に掛けている。
後ろの荷台には旅行用バックが
括り付けられてある。
多喜良「…もしかして、まさか迷子?」
声を掛けられ顔を上げると多喜良。
花屋の店名入りエプロンをつけている。
多喜良「オレ、向かいの花屋でバイトしてるんだけどもう何時間もそこ坐ってるからさ、気になって」
5年前なので、ちょっと若い多喜良だが、
仁は今も昔もまったく変わっていない。
しいていうなら髪がボサバサしているだけだ。
仁「・・・ 」
自転車の様子からして
旅しているらしい事は察した多喜良。
多喜良「ちょっとなごんでいかない?花屋なんだけどさ、店長がオレのウデ気に入ってお抹茶サービスやってるんだよ。特別にお菓子もつけるからさ」
営業スマイル多喜良。
仁を年下だと思っている。
多喜良を見つめていた仁だが
フイと顔を背ける。
仁「…いらない」
多喜良「何で?お抹茶苦手?」
仁「ーー・・・ 金(カネ)、ないから」
座ってる仁に目線を合わせる。
多喜良「だからサービスだって。別に花買ってくれなくても、お抹茶だけでも金とらないから」
仁「・・・ 」
多喜多「旅してんなら、お抹茶にオレん家一泊付きでどう?」
仁「… タダ?」
多喜良「タダ!! しかもスペシャルで食事付き。これも何かの縁でしょう。袖触れあうも多生の縁、旅
の思い出大切に」
徐々に芝居がかってくる。
思わず小さく吹きだす仁。
仁「ぷっ… へんなやつ」
多喜良「それって最高のホメ言葉。ホラ、体冷えてるだろ、早く入ろーぜっ」
花屋店内。
畳ベンチに座っている仁。
ドガガガガガ ・・・・・・ と
工事さながらの音が聞こえ少し青ざめる仁。
仁「・・・ 」
多喜良「はーいおまたせ~。お抹茶アンド本日のお茶菓子バナナようかん召し上がれー」
硝子製のお抹茶茶碗に
なみなみと注がれている。
仁「…おれ、お茶の世界ってまったく知らないけど、ガラス製の茶碗ってあるのか?」
物珍しく眺めては手に取ってみる。
多喜良「あぁそれ、オレが作ったオリジナル。今いろんな素材でお抹茶茶碗作ってんの。気に入って
くれた?」
仁「シュミでやってんのか?」
多喜良「んー、まぁ、これでも芸術家のタマゴ、…でもないか、たしかにシュミが高じて作るようになったけどさ。ここさ、芸術家集めた工房村ってのがあるんだよ。オレ順番待ちで、いずれ入村できたら
本格的にやるんだ」
仁「へーっ」
多喜良「再来年には村の拡張工事があるらしいけど空きができればすぐにでも入るつもり」
仁「…お前すごいんだな」
こくっと思わずお抹茶を飲む。
仁「・・・・・・ 」
多喜良「どうした?」
仁「…さっきの音聞いて絶対ギャグだと思ってたから…なんだよ、コレ、すげーうめぇじゃん…」
多喜良「あったりまえだろ、オレが真心こめてたてたんだぜ」
こく…こく…と味わう仁。
ほろっ、と涙がこぼれる。
仁「コショウでも、入れてんのかよ…涙、…止まらねーんだけど」
多喜良「だから、入れたのはオレの真心、愛。…それにコショウはくしゃみだろ」
仁「コショウ、っつーたら涙だろ」
あたたかく見守る多喜良。
多喜良「…まぁ、かくし味に、ちょっとコショウも入れといた」
仁「やっぱり…でも、なんか、すげーいやされる」
仁の頭ぽふぽふする多喜良。
店内にある薔薇を一輪バケツから抜き取り
直接リボンを掛ける
多喜良「はい、これ。オレからプレゼント」
仁「・・・ 」
多喜良「バラは贈る本数によって意味あいが違ってくるからさ、『チッ、一本かよケチだな(怒)』って
思わないでくれよ」
深く考えず、差し出されたので受け取る仁。
仁「…一本ってイミあるのか?」
多喜良「あるよ。今はナイショ」
唇に手をあててウインク多喜良は魅力的だ。
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