アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13 回想-多喜良幼少期エピソード-
-
工房で羊羹を食べつつ黙々と作業する多喜良。
--回想 幼少期 --
純和風の、『たのもー』と声掛けすれば
武士が出てきそうな雰囲気の立派なお屋敷。
多喜良のただいまコールがお屋敷中に響き渡る。
今からは想像がつかない程キッチリ
お坊ちゃんスタイルだ。
風流な和室には絵に描いたような
〝上品なザ・日本のおばあちゃま〟
が新聞に目を通している。
多喜良「ただいまっ、おばあちゃま」
謡子(祖母)「お帰りなさい、たっくん」
謡子(うたこ)おばあちゃまの一挙一動
すべてが美しく上品だ。
多喜良「ねぇねぇ、もうできた?できてる?」
ソワソワ多喜良。
時計を見るおばあちゃま。
謡子「そうねぇ、…そろそろいいかしら」
多喜良「わーい」
おばあちゃまの手を引きお台所へ向かう。
冷蔵庫には出来上がったばかりのお手製羊羹。
目がキラめく多喜良。
型から抜出し切り分けてゆく。
多喜良「うっわぁぁぁっ」
見ているだけでほっぺたが落ちそうな多喜良。
おばあちゃまからお抹茶をたててもらい、
羊羹とともに食す。
これが多喜良のおやつタイムの風景。
多喜良「゚+。:.゚(*´∀`*).:。+゚ 」
言葉にならない程うまい。
多喜良「ボクね、おばあちゃまが作るお菓子の中でようかんが一番好き」
謡子「そうなの、ありがとう」
多喜良「明日もあさっても、一週間後も1か月後もおやつはずーっとようかんがいいな」
謡子「そんなに羊羹が好きなの?」
多喜良「うん!おばあちゃまのようかんはほっぺたが落ちちゃうから!!」
謡子「あらあら、毎日ほっぺたが落ちてたら大変なことになりますよ」
多喜良「大丈夫、ほっぺたがおちるってことはしあわせの証拠なんだよ!」
謡子「まぁ…そうなの?」
多喜良「そうなんだよ!ごちそうさまっ、今度はボクがお抹茶たててあげるね」
ドガガ・・・・・・
工事現場さながらのお作法に、内心頭をおさ
えているのだが顔には出さないおばあちゃま。
多喜良「はい、めしあがれ」
謡子「おてまえちょうだいします」
美しい動作(しょさ)でお茶を飲むおばあちゃま。
多喜良「おふくかげんは、いかがでございますか」
謡子「たいへんおいしゅうございます」
謡子「…本当、不思議ね。たっくんはお作法がまったくできていないのに、なんでこうもおいしいお茶がたてられるのかしら」
多喜良「それはねっ、おばあちゃま大好き!って真心こめてるからだよ」
穏やかに微笑むおばあちゃま。
謡子「どんなに真心を込めてもこうはいかないものよ。それに…たっくん、りっちゃんの事が本当は嫌いでしょ?嫌いな人にでもちゃんとおいしくたてられる、これは本当にすごいことよ」
多喜良「…りっちゃん、いじわるするんだもん…けどお抹茶のことは嫌いになってほしくないから」
りっちゃんとは近所に住む
ガキ大将的な女のコ、中村理栄子。
多喜良によくちょっかいを出している。
多喜良「ボク、お抹茶がほんとーーに、だーーいすきなんだ。世界中の人に知ってもらって飲んでもらいたい位。大きくなったら、お抹茶を世界中に広める旅に出るのが夢なんだ!」
熱く語る多喜良を
あたたかく見守るおばあちゃま。
多喜良「おばあちゃまは笑ったりしないの?」
謡子「どうして?」
多喜良「学校で話したらみんな笑ったんだ」
謡子「笑ったりしないわ。だって日本の伝統文化を世界中の人々に伝えるなんて、立派な事よ」
ぱあっと笑顔の多喜良。
多喜良「ボク、りっぱ?」
謡子「立派ですとも」
多喜良「ボク、世界中で出会った人達にお抹茶をのんでもらう。そして世界平和をつくるんだ!!心がいやされたら戦争なんてしなくなるでしょ!!」
突拍子もない事をキラキラ熱く語る。
謡子「くすっ…そうね、たっくんなら出来るわ」
多喜良「じゃあ、旅する時はおばあちゃまも一緒だよ!お抹茶にはおばあちゃまのようかんがなくっちゃ!」
謡子「羊羹が世界平和に役立つかしら?」
多喜良「うん!おばあちゃまのようかんはすごく重要だよ」
多喜良「約束。旅する時は、おばあちゃまも一緒」
謡子「約束ね」
ゆびきりする。
--回想終了--
作業中多喜良。
羊羹をもしゃもしゃ食べつつ
手は彫刻作業をやめない。
多喜良(・・・ ヨーカン、食いてーな…)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 17