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10日後。
多喜良個展初日。
吉田「どうぞ…」
パンフを渡す受付嬢吉田(よしだ)さんが
ぽわん?とした瞳で律郎を見る。
パンフを受取り中に入ると
かなりの客(ギャラリー)が入っていて
夕刻にもかかわらず、ごったがえしている。
律郎(香水の臭いキッツ…)
8割方女性客でちょっとたじろぐ律郎。
でもあまり表情に出ない。
芸術家の個展というよりは、
アイドル握手会のノリだ。
ちょうど多喜良と仁が
女性客達に囲まれツーショットの
写メ(デジカメ)撮られまくりの状態を見つける。
みのりん「次、こっち向いてくださーい」
ゆっきー「ぎゃー、多喜良さーん」
明らかにオタクな腐女子、
芸術よりも多喜良が目当てな女性等の
リクエストに快く応えている。
二人共スーツを着ているが、
キッチリ決めた多喜良は別人。
普段の小汚さは微塵もなく、
どこかの国の王子(皇太子)みたいだ。
仁のスーツ姿うぃ見つめる律郎。
律郎(ぷっ…あいつサラリーマンやってたのに、新入社員みたいじゃないか)
スーツ姿が初々しい…。
律郎「・・・ 」
なんかウズウズする衝動が…。
律郎(これが〝萌え〟なのか!?)
多喜良「じゃあ今度はこんなポーズでどう?」
多喜良がまわりをあおるように
仁と密着し顔を近づけると仁が一瞬驚く。
途端にキャーッと黄色い声が上がり
フラッシュも瞬く。
仁「いいかげんにしろっ」
仁が多喜良の脳天にゲンコツを落とすという
オチまで女性客にはたまらないらしく、
ますます盛上がっている。
騒ぎが一段落すると
作品を見ていた律郎に仁がやってくる。
仁「おつかれ、遅くなってごめん。気付いてたんだけど、なかなかぬけられなくて…」
律郎「そっちこそおつかれさん。俺はかまわない。お前は主役の相棒だからな」
多喜良は〝おエライさん〟に
つかまっているようだ。
仁「来てくれて、スゲーうれしい」
律郎「お前はいいのか?あっちにいかなくて」
仁「いいよ、主役が相手してんだから」
律郎「あいつの個展っていうけど、かなり作品提出してるんだな。二人展みたいじゃないか」
仁「そうか?おれそんなにがんばった感ないんだけどな。律郎はどれが気に入った?今なら破格
のお値段にしとくけど」
律郎「どこに置けっていうんだ、デカいサイズばかりじゃないか、値を付けるのはあいつだろ」
仁「だいじょーぶ、分解して運べるからさ」
満面の笑みをうかべる仁。
律郎「・・・ 」
律郎(ーー・・・ それにしても… )
作品に目を移す律郎。
律郎(あいつがどれだけ仁を本気で想っているか、これらを見ておもい知らされる…)
タイトル〝ひとめぼれ〟
木彫りの薔薇の花びら中心から
少年が生まれてきたような彫刻。
顔は違うが仁のリラックスした時の表情だ。
しいていうなら顔に輪郭が仁と同じだ。
頬には片方に一粒だけ硝子の涙が流れている。
〝ずっと一緒にいたい〟(バラ99本)
〝結婚して下さい〟(バラ108本)の作品まである。
律郎「小汚いヤツなのに作品は随分ロマンチックなんだな」
仁「今回は〝薔薇の少年〟ていうテーマで作ってたからな。これ!見てくれよ、これっさホントにバラの花999本彫って作ったんだぜ。そしておれが一番気合い入れてたやつ」
タイトル〝 何度生まれかわっても君を愛す-999本の薔薇に思いを託して-〟
敷きつめられた木彫りの薔薇は
繊細な作りでその上に硝子製の割れた卵、
卵からは豊かな表情の木彫り少年達が
外へ飛び出そうとしている。
律郎「・・・ 」
仁「なっ、スゴいだろ。これ、一度卵作ってから割ったんだ。その後カケラひとつひとつ研磨して。カドはとれてるけど、組立てると元に戻るんだぜ」
嬉々として作品説明する仁。
律郎(あれは、全員、仁(こいつ)だ)
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