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16歳 裸足の逃走
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壮介は部屋に取り残されるが、暇をすることは無かった。
それより『写していい。』と言われた数学の教科書に釘付けになった。
(いつやってるんだ?すげぇ…。)
まだ入学して1ヵ月半なのに殆どラストのページまで解いてある。
教科書に走り書きで答えを書き込んでいる所を見るとやったのは授業中だろうか。
他の教科も同様、教科書はほぼ書き込みで埋まっている。
「すっげぇ。テスト前に写しちゃお。」
誠実の答えを時間も忘れて夢中で写していると、むくりと理久が身体を起こした。
「おう、理久。大丈夫か?」
言葉を掛けるが理久からの返事がない。
「…理久?」
机を離れ、理久の顔を覗きこむ。
ポロポロと涙を落としながら理久は小さく呟く。
「…誠実…はぁ…?」
「すぐ帰ってくるから寝てな。」
ベッドに理久の身体を倒すと布団を掛けて誠実のする様にポンポン頭を撫でる。
「う…ぅぇぇ…。」
突如豪快に泣き出す理久を慰めるべく壮介がベッドに飛び込む。
不在にしている人間の真似をし、背中を摩る。
「よしよし、すぐ帰ってくるって。お前の飯買いに行ってるだけ…ってオイ!!」
「…っ、やっ!せ、誠実ぃ。」
誠実のぬくもりではないことで理久が身を捩り腕から抜け出す。
手首を掴んだつもりが羽織っていたパーカーだけだった。
理久の身体はスルリとパーカーから抜けて、そのままフラフラ部屋のドアに向う。
慌てて壮介も理久を追うが理久は覚束ない足取りのまま走り出す。
「理久、転ぶって!危ないっ!!」
後ろからの声になど振り向きもせず、理久ははぁはぁと息を切らし寮の入口に辿り着く。
行き交うクラスメイトは理久の必死な様に制止出来ず傍観者となった。
靴も履かずにそのまま外に飛び出すと、丁度誠実が戻ってきたところだった。
バス停に誠実の姿を見つけると理久はホッとしたようにその場に立ち尽くす。
「理久っ、お前裸足で何やって…!!」
「ばかぁ…置いてった…誠実、誠実ぃ、置いてかないでぇ…。」
子供のように泣きじゃくる理久を誠実が駆け寄って抱きしめた。
理久の頭越しに追ってきた壮介の手からパーカーを取ると代わりに買い込んだ食べ物とケーキの箱を壮介が持った。
軽い身体を抱き上げるとそのパーカーでそっと包む。
「ごめんな、一人にして。帰ろう。ケーキあるから。」
「うー…。」
ようやく得た慣れ親しんだ体温に理久はホッとして目を閉じる。
「…壮介、それ、一つはお前のだから。ありがとな。見ててくれて。」
ピンク色の箱が2つ。
学校からバスで出掛けた先のケーキ屋の箱だ。
他の物は近くにあるコンビニで買えそうだったが理久の為に足を延ばしたのだろう。
誠実は理久の髪に顔を埋め愛おしそうに抱きしめると、玄関でざわつく寮生たちの間を通り自室に向かった。
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