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夢の正体
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夢見が悪かった。そう、それだけの事。
頭が重い。寝不足のせいで偏頭痛をおこしてる。
けれど今日、会社に行けば新しい日が始まる。そんな気がしていた。
夢見の悪さのせいか、靄のかかった気持ち悪さをどこかに残しながらいつもの電車に乗った。
珍しく電車は空いていて、近隣の高校が休みなのだと知る。
ドアの近くの座席に腰を下ろすとポケットの中の携帯が小刻みに震えた。
・・・着信?誰から?
携帯を取り出して確認すると母親からの着信だった。
電車の中では応えることもできず、そのまま携帯をポケットに戻す。しばらして携帯はポケットの中で大人しくなった。
会社に着くと携帯を確認する。着信は一度だけだった。
念のためにほとんど使っていない携帯メールをチェックする。
友達はまず無料の通信アプリに連絡をよこす。携帯のメアドに送ってくるのはジャンクメールが未だにガラケーを使っている母親くらいのものだから普段はほとんど確認しない。
何十もあるくだらない内容のメールに混じって知らないアドレスから一件、そして母親から二件のメールが来ていた。
『お見合いのお相手にあなたのメルアドを渡しておきました。連絡してくれるそうだからきちんと話して今後のことを決めなさい。』
そして月曜日付の見知らぬアドレスは真田さんだった・・・
『真田です。昨日はありがとうございました。木村さんのお母さんからメルアドを教えてもらいました。こちらが私の連絡先になります。よろしくおねがいします。真田 葵』
そのメールに続いて、追い打ちをかけるように母親からのメールがある。
『ちゃんと先方へ返信しなさい。仕事が忙しいとか、言い訳はもう聞きません。こちらで進められるところは進めておきます。細かいことは先方と話して決めるようします。』
え・・・これって・・・。慌ててロビーへ移動すると母親の番号を回す。
「もしもし、母さん。何勝手に進めているんだよ。ちょっと待って。」
「何言ってるの。あなた私が気に入ったらそれで結婚するって言ったでしょう。今更何を言い出すの?」
私が結婚するんじゃかいから自分で決めろと言った舌の根も乾かないうちに。
全てが自分の都合の良いように覚えている。どうしてこうなるのかな。
奏太と約束した、一歩だけ歩み寄ると。奏太にそして自分自身にきちんと向き合って、前に進めるかもしれないと思った矢先だというのに。
「あのさ、結婚って。いや、その真田さんがどうってことじゃなく。とりあえず結婚は一旦見送らせてほしいんだけれど。」
「瑞樹、あなた自分の言ってること解っているの。そもそも・・・」
「だから、待ってって。俺今は結婚できない!そもそも高校の同級生って以外何も知らないし。」
「結婚するって言ったじゃない。」
埓があかない。このまま堂々巡りになるのは見えている。
「金曜日の夜に帰るから、真田さんとはきちんと話をするから。もう始業時間になるから電話切るよ。」
電話を切ると、デスクに重い足取りで戻る。横をつと通りすぎる女子社員が「おはようございます。」と声を掛けてきたが、曖昧に笑うのが精一杯だった。
「木村、お前どうした?顔色悪いぞ。」
課長に声をかけられ「大丈夫です」と辛うじて返した。
まるで自分が昨日のい心地の悪い夢の続きを見せられているようだった。発した自分の声は水の中で息を吐き出したように、ごぽごぽと意味をなさない空気の音のように聞こえてきた。
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