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夢から覚めて
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まるで水に漂っているように、気持ちが高揚してふわふわと浮いた感じになる。
「瑞樹・・・もう、いいか・・ら」
「全く、俺だって余裕無いのに」
早くと求められ、タガが外れる。奏太は今までの心の隙間を埋めるためにと、その手を伸ばしてくる。
求められて必要とされて、歓喜する。
「・・・く・・ふ」
綺麗だと思う。男に綺麗だと言うのはおかしいのかもしれないが、本当に綺麗だ。どんな表情もしっかりと自分の中に刻みつけるために、一瞬たりとも見逃さないようにその声を表情をしっかりと捉える。
「瑞樹、瑞樹、み・ずきっ」
腕の中で小さく震えながら、何度も名前を呼ばれる。呼ばれるたびにその声は甘く耳から入ってきて頭の中で暴れまわる。
喪失、孤独、そして嫉妬、負の感情全てが掘り起こされる。胸の奥にしまっておいた醜い自分自身が日の当たる場所に引きずり出され浄化されていく。もう苦しまなくても良いと自分を解放してやれる日がようやく来た。
「奏太、どこにもやらない。俺を置いて消えるな」
失ってはいけないものが人には絶対ある。俺には奏太が必要なんだ。風に流されて飛ばされそうになったいた俺をしっかりと地面に留めてくれるアンカー。
「ん、ここ・・に・いる」
奏太を後ろから抱きしめて左足を腰にかける。隙間なく重なってもそれでもまだ距離があるような気がして不安になる。
絶頂の後、腕の中で安心したように眠る奏太を抱きしめながらこれからの事を考える。
もう後戻りはしない。できない。だったら前に進むしかない。
「奏太?」
眠っていると思っていた奏太が腕の中で体の向きを変えた。そして、しっかりと俺を見つめて口を開いた。
「瑞樹・・・これからどうするの?」
「・・え?」
「俺はこうやって瑞樹のところに戻れて幸せだと思うよ、でもね・・・」
「・・・でも?」
「瑞樹は?」
「どういう意味?」
「だって・・・結婚するって・・・」
一番思い出したくない、後回しにしたいと思っていた事実が奏太の口から語られる。このままにしておくわけにはいかない、承知の上であえて忘れたふりをしていた。
小さくため息をつくと、奏太をしっかりと抱きしめなおした。いつまでも逃げていてもしかたない。
「奏太、金曜日の夜帰るよ。その時一緒に来てくれないか?」
奏太は一瞬考えて、頷くとようやく目を閉じて眠りについた。
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