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番外編 とある飼われ猫の受難-1
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誰かに、生贄だと囁かれた。
人間は人獣の中では珍しい。それと同時に、劣る。
劣るから、補う。俺の場合は武術だった。
目を付けられたのは五年くらい前。俺が用心棒で貿易船を見張っていた時だった。人獣たちに、見下された目で依頼をされた。報酬金はわざと最小限で食事一回分ほど。ここで揉めたら面倒だと思った俺は、それで請け負った。
「君、人間?」
「……誰だ」
ゆっくりとまだらの尻尾を揺らして近づいてくる派手な服装の獣人の男。人獣は人間より体格が良い。好奇心に満ちた目で、俺に近づいてくる。
「君でしょ?用心棒って」
「用心棒だが……」
こいつも俺を馬鹿にしに来たんだろうな。これでちょうど十人目。いや、十匹目に近いか?
「俺、マサキっていうんだ。君は?」
「イチ」
素っ気なく返すと、目の前にそいつが立ちはだかった。視線のみ動かして、すぐに戻す。
「ふんふん……人間ってもっと、油臭いって聞いたんだけど……イチは美味しそうな匂いがする」
「は?」
「なんて言うのかな……雌の出すフェロモンとは違うんだけど、うーん……ちょっといい?」
首筋に顔を埋められ、身体を捩ろうにも力の強い獣人に抑えられている。一応雇い主だから、下手に動けない事をいいことに好き勝手匂いを嗅いでくる。
「うん、やっぱり美味しそうな匂い。ちょっと囓っていい?」
「ダメに決まってるだろ!」
「じゃあ、味見だけ」
ダメだと言おうとした口を塞がれる。目の前には、そいつの顔。ぬるりとしたものが口をこじ開けようとしていた。
「ひぁっ!?」
「そんな声出るんだ」
脇腹に手を這わされ、思わず出た声を笑われる。睨み返すも巫山戯たように手を上げただけ。
「んー、もっと味見したいけど、そろそろ戻らないとミツルギに怒られるから」
「さっさと、戻れ」
「うん。あ、夜空いてる?食事に誘って良い?迎えに来るね!」
一方的に喋ったそいつは、さっさと帰って行った。
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