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初仕事
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「……これとか無難だな」
見つけた仕事は時計修理だ。記された場所まで何人かに尋ねながらやっとの事で辿りつく。
「すみません、広場の掲示板でこちらの時計修理が張り出されていたのですが」
「あら、まさか、貴方……技師様?」
「はい、技師を生業にしています。それで……この依頼はまだ有効でしょうか」
「えぇ。でも、お一人で大丈夫?」
「……大時計ですか?」
言われて納得した。案内された部屋には、ざっと見て30近い時計が置いてあった。大小、懐中時計から壁にかけるもの様々。
「……よく集めましたね。ご主人の物ですか」
「良くお分かりね。主人ったら時計に目がないの。今日も新しい時計を探しに出かけているくらいだわ」
「それで……手入れはおろそか、と?」
「そうなの。細かい仕事はあまり得意ではないようで……技師様、一つの修理に……」
夫人から提示された金額にあっさりと請け負った。一日では終わりませんよ、と問うとそれなら泊まってくれて構わないと返される。夜は約束があるのでと断ると渋々ながらに明日の朝また尋ねることを承諾してくれた。
「嬉しいわ。生きているうちに旅人さんに出会えるなんて……しかも、我が館を訪ねてきてくださるなんて」
「たかが旅人ですが、そこまで言われると反応に困りますね」
道具を机の上に並べながら返事を返す。夫人は上機嫌だからいいか。
「それに旅人の技師なんて初めてだわ!孫達にも自慢できそう」
「あぁ、それと。旅人だとか技師様だとか、そう呼ばれるのは余り慣れていないのでトーマとでもお呼びください」
しばらく籠もりますね、と伝えると、何かあったら呼んでと返された。ま、何も無いんだけど。
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