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仕事終わり
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「終わったのかい」
「あ、伯爵。終わりましたよ」
伯爵がお茶に誘ってくれたので仕方なくついていった。夫人の事を聞くと今日は親子で買い物らしい。豪勢なことだ。
「旅人……確かトーマと言ったか?」
「そうだよ。姓は伏せてるけど」
「何か知られたくない理由でもあるのか?罪人の子か?」
「まさか。祖先も誰も罪人じゃない。名前にモノ言わせたくないだけだ」
「……名家の出か。嫌いじゃない」
「それはどうも。伯爵に気に入られるとはね」
紅茶と共に出された焼き菓子を1つ咀嚼する。なかなかうまい。
夫人は自分の趣味は理解できないらしく、話せる相手が欲しかったそうだ。
「しがない流れ者の技師で良ければ」
「ありがたいね。家の奴らも時計には無頓着で……そのくせ私が口を出したら嫌な顔をされる」
「そんなものです」
「それと……1つ腕を見込んで頼みがあるんだが」
「何」
「お抱えの時計修理技師になってくれないか。給料は好きなだけ」
「断る。旅人だからね」
「そこを何とか……!」
「無理。今日はこれで終わりだし、修理代よろしく」
請求書を突き出すと、忌々しげに舌打ちしてくれたがきっちり払ってくれた。
「どうも」
「さっさと出て行け」
「言われなくても帰るよ」
フードを被り、さっさと退散させてもらった。今日はいい酒でも飲もうか。
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