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寂しい笑顔
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カイ君の想い人は谷原先生?
「じゃあ…ソラ君の父親も…?」
そう僕が言うとカイ君はぐっと口を噤んだ。カイ君…それはイエスって意味にしかならないんだよ。
あの頃谷原先生には好きな人がいた。僕と付き合ってるって学校では周知の沙汰で、それは僕にとっても谷原先生にとっても都合のいい話だったから否定する事もなかった。けど、谷原先生は「好きなやつがいる。だから、別れた事にしてくれないか。理由を聞かれたら、俺のせいにしていいから。」って、それからの僕の事を考えてそう言ってくれた。理由を聞かれた事はほとんどなかったからいい感じに誤魔化して終わった。谷原先生が悪く言われるのも違うと思ったし、その好きな人に悪いイメージを与えなくはなかった。だけど、谷原先生が誰を好きでその人とどうなったのかなんて僕は知りようがない。年度が変わって谷原先生がカイ君の担任になって、カイ君が少しでも学校生活を楽しめればって…そんな理由で度々谷原先生にカイ君の事をお願いした事はあったけど、谷原先生がカイ君を好きだったなんて、知らなかった。
「カイ君、谷原先生にちゃんと言おう?谷原先生もカイ君がいなくなった時は凄く心配してたんだよ?」
今思えば、カイ君がいなくなったと分かった時、谷原先生は誰よりも深刻に、誠実に、カイ君の身を案じてた。いなくなったとはいえ、学校は正式に退学していたものだから、学校としては何の問題もなく担任としてカイ君の事を探す意味はなかったけど、谷原先生はそれでも探し続けてた。教師と生徒以外の感情があったと、そういうことだった。
どうして気が付かなかったんだろう。
「ここの場所を教えてくれたのも谷原先生なんだよ?最近会ったんでしょう?」
「だろうなとは思ってた。他に雅に繋がる人はいないし…。会ったけど何って事じゃないよ…」
「だけど谷原先生はずっとカイ君に会いたがってたんだよ。谷原先生はカイ君がΩな事を気にしてないし、それで周りにどう思われたって気にしないでしょ?」
「だからだよ。むしろ気にしてくれたなら俺だってこんなに渓史さんを想ったりしない。受け入れてくれるから、俺は渓史さんに申し訳ないと思っちゃうんだよ。せめてそれで俺を責めてくれるなら、許される気がするのに…」
「責めるも何もないじゃない。Ωに生まれた事はカイ君の望んだ事でもないのに、それをどうして責められるの?」
「本当に…そうなのかな…俺さ、たまに思うんだ。Ωに生まれたのは偶然なんかじゃなくて、必然なんじゃないかって。悪い意味でもなく、例えば空に会えた事は俺がΩだったからだろ?だとしたら、俺はこの子に会うのは運命だったと思うんだ。…だから、俺は望んでΩに生まれてきたんじゃないかって。」
「ソラ君の事は確かにそうかも知れないけど、だからってカイ君がつらい思いをする事も必然だなんて僕は思いたくないよ。幸せになっていいのは、αもΩも変わらないでしょ。」
僕は何度となくカイ君には言ってきた。Ωは幸せになっちゃいけないなんて事ないんだよって。だけど決まってカイ君は寂しそうに笑う。今もまた、カイ君は変わらない笑顔を見せていた。
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