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勇気
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カイ君はその園長先生…確か名前は桜庭さん…を悪く思ってるわけじゃないみたいだけど、彼の好意には相変わらず鈍感みたいだ。でも、2人の間には何かがあって、全く意識していないわけでもなさそうで。谷原先生の方が今は分が悪い。
「また来るね」
そう言ったら笑顔で「待ってる」って言われて、「今まで連絡しなくてごめん」って謝られた。この3年間、カイ君の心配をしなかった日はないけど、会えた事で全部が帳消しになったよ。
思ってたより元気な姿に安心したけど、問題はまだまだ山積みで僕がどうこう言える事じゃないけど、谷原先生との事はどうにかしてあげたかった。
僕はポケットからケータイを取り出して履歴から谷原先生の番号を見つける。発信を押そうとして一瞬躊躇う。何を、どこまで話そうか。カイ君には色々言ったけど、僕だって2人の事を大切に思ってるんだから、あまりに勝手な事は出来ない。とりあえずまずは、会ってきた事を話そう。
呼び出しは2コール。
谷原先生、待っていたのかな。
「もしもし、谷原先生?」
「あぁ、どうした?」
「今ね、カイ君に会ってきましたよ。」
「そうか。」
「どうだったか聞きたくないですか?」
「…そりゃあ聞きたいけど…」
谷原先生ってこんなに消極的な人だったかな、と考えて、あぁ、カイ君の事だからかって思う。知ってしまえば単純な事なのに、分からないと気付けないものだ。
「って言っても僕もそんなに突っ込んだ話は出来てないんだけど。ソラ君の風邪も今はそんなに酷くなさそうだったし、カイ君も元気にやってるみたいで良かったよ。」
「そうか…」
「…ねぇ、谷原先生…カイ君と谷原先生は…」
「…それは、聞いたのか。」
「谷原先生はカイ君の事が好きだったの?だから、僕と別れたって事にしてって言ったの?」
「あぁ…」
「今もその気持ちは変わらない?」
「…変わらないよ。」
やっぱり、谷原先生もカイ君の事、ちゃんと好きなんだね。
「谷原先生?僕ね、カイ君には幸せになって欲しいんですよ。」
「俺だってそう思ってるさ。」
「僕はね、カイ君を幸せに出来るのは谷原先生だと思ってますから。だから、カイ君の事見捨てないで下さいね。」
「…分かってる」
ソラ君が谷原先生との子だって伝えたら、先生はきっと責任を取らなきゃって思うだろう。それで先生がカイ君と番になってくれたら幸せには違いないけど、でも、3年前のカイ君の勇気を僕は無碍にも出来ないんだ。だからさ先生、今の先生が今のカイ君を幸せにしてあげて欲しい。
僕は結局、見守るしか出来ないんだな…
谷原先生との通話を切って、僕は早足で自分の家に帰る。
なんだか、智史さんに無性に会いたい…
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