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本音
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空君の父親はどんな人だろう。少なからず海斗が愛した人なんだろう。俺の知らない時間を共に過ごした相手。
「…一応連絡は取れてます。最近は空にも会ってる。」
海斗が俯きながらそう呟いた。
「そうか。なら良いが、でもおまえはそれで良いのか?結婚っていう形式にこだわるつもりはないが、それでも空君には父親の存在が必要な時もあるんじゃないのか?」
「そう思う時もありますけど…だからって簡単にはいかないんですよ…」
「それはやっぱりおまえがΩとかそういうのにこだわるからか?」
俺の時みたいに、αとΩの間にある壁をただ見上げるだけで、その大きさに絶望してすぐに背中を向けてしまうから、だからその人とも一緒にいられない。
同じ事だ。
そうやって海斗は1人を選んでいるのだ。
だけど、俺のその言葉に反応して、海斗は顔を上げて悲しいような、怒っているような顔をした。
「こだわってるって…別に、俺はそんな事にこだわりたいわけじゃない!こんなもんに一々振り回されたくないけど、それを許さないのは周りの方じゃないか!俺は普通に生活してるだけなのに、Ωだって分かった瞬間にまるで汚いものを見るような目でこっちを見るじゃないか!俺が触ったものには触りたくないって言う人だっている!俺がΩだって事…忘れさせてくんないのも、それを許さないのも…俺じゃないよ…」
瞳に涙を溜めて消え入りそうな声でまた「俺じゃない…」と呟く。
誰も彼も生まれた瞬間から自分がαであるとか、βであるとか、もちろんΩであるとか、そんな事を分かって生まれてくるわけではない。社会の秩序の中で徐々に理解していく事もあった。例えばそれは、Ωが世間から蔑まれているということで、大人が向けてくる嫌悪の表情でそれは読み取れる。そういう些細な積み重ねが、海斗に抵抗しないという生き方を植え付けた。その非難の目が、抵抗しても無駄なのだという「諦め」を育てた。
それもそうだろう。
そんな辛い思いを、好きな相手にはして欲しくないから、だから身を引く。
同じ立場だったら俺だってそうする。
あの頃の海斗の心が見えてくるようだ。
世の中が変わらない以上、
多分海斗も変われないんだ。
だけど海斗、それじゃあダメなんだよ。
俺はおまえに、二度も諦めて欲しくないんだよ。
「傷つけたかったわけじゃない。怒らせたかったわけでも。だけど…その心の悲鳴は、本当はもっと早く聞きたかったよ…」
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