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一過性予兆
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「………」
「どうしたハルト?」
無言で返却されたテストをにらみつけるハルトにシュウは声をかけた。
不安げに顔を覗き込むと、やや視線を逸らされたが気にせず答案を覗き込む。
「おー98点?すっげぇいいな!」
「よくない」
ほめちぎるシュウに、ハルトは渋い顔をした。
「この問題はとれるところだ。こんな小さなケアレスミスで落としていいところじゃない」
一か所だけチェックが入っている問題を指でなぞり説明する。
だがシュウにはどうしてもハルトが指差している問題は解けなかった。原因がケアレスミスなら今後気をつければ満点をとれるハルトを、単純に尊敬する。
「でもさー珍しいよねハルトが凡ミスだなんて。おれ、びっくりしちゃったよ」
「それはお前が最近…」
「え?俺がなんだって?」
「…なんでもない」
近頃、シュウがやけに構ってくるからだ。と言いわけめいたことを口にしようとした自分を恥じる。
いくらシュウに時間を取られようが本望であり、勉学をおろそかにしたのはハルト自身だ。
それを幼馴染のせいにしようと一瞬でもした自分が許せない。
「まあいい。ほかの教科で挽回する」
「おう頑張れよ!」
にかりと笑って応援してくるシュウに、軽く頷いた。
しかしテスト返却が続くと、ハルトの眉間のしわが一層深くなっていく。
「………これは本格的にまずい」
すごい目つきで返却された90点台のテストを不満げに見据えるハルトの脳裏に、不穏な気配がよぎった。
「また面倒なことになる…」
机に倒れこんだハルトを必死に慰めようとするシュウだったが、90点台で落ち込む意味が分からなかったので同調してあげられず、あまり効果はなさそうだ。
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