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「えーじゃあ来週の球技大会のチーム分けをするぞ!」
教壇の前に立ったリョウが血気盛んな様子で声を張り上げた。
隣には心底うるさそうにリョウを横目で眺めているハルトがいる。
担任と副担任は教室にはおらず、生徒たちだけの空間ができあがっている。
担当教師がいないだけで皆の抑制が緩み、わいわいと仲のいい友達同士で輪を作っていたが、リョウの一声で固まっていた輪っかが欠けていき、あっという間に全員着席していた。
この短い期間でクラス委員として認められているリョウの人柄に、シュウは密かに舌を巻いていた。
「競技はドッジボール!試合は前半と後半に分かれて行う!」
そこまで言い切るとハルトに意味ありげな視線を送る。
受け取ったハルトは嫌々頭の中に入っている競技説明を口に出した。
「卑怯な真似はもちろん激しいガヤや罵倒などは当然禁止。顔面セーフ、10分以上決着がつかない場合はボールが二つ投入され、ダブルになる。怪我をした場合は保険医に直ぐに申し出ること」
紙を読むかのようにすらすら説明したハルトに「黒板に書いてくれ!」と更に注文をつけるリョウ。
当然ハルトはだるそうに首を横に振る。
じーっと硬直した微笑みのまま凝視されるが、打たれ強いハルトにとって痛くも痒くもない。
リョウの横顔を見なければならない生徒たちの方が怯えているのは気のせいだろうか。
「まあいい。ではまず組分けから」
「ユツキ!当然俺と一緒にするだろ!」
「…サガラから、離れるつもりはない」
「おまえは鈍いからな。俺が組む」
「子守じゃねーんだぞ!嫌だっていってもどうせ無理やりなるつもりだろ?俺を馬鹿にする気で!」
「あははー聞くまでもなかったかー」
即効くっついた仲間たちに、リョウは珍しくため息をこぼした。
「じゃあ他のみんなはどっちのペアにつきたいか各々決めてくれ。ちなみに俺は前半が」
「ユツキ!どっちにする?」
「サガラが好きな方に」
「んじゃあ前半に出てかっ飛ばしてやろうぜ!」
「…」
「後半で勝負を決するというのも面白いな!うん!そうしよう!」
ユツキの邪魔者はどっかいけ光線にやられたリョウは額から汗を流した。
「んじゃー俺とハルトが後半?俺、弱いけど大丈夫か?」
「俺がいるから大丈夫だろ」
不安そうにハルトに尋ねるシュウに、自信満々な答えが返ってくる。
「なんでそんなに自信があるんだよ…」
「俺を誰だと思っている。たとえ3年だろうが1年だろうが同学年だろうが、俺とおまえの前に立つ奴は全てつぶす」
影かかった漆黒の瞳は静かなやる気に満ちていた。
その気概は確かに教室の空気を揺らし、武士たちを震わせた。
サッカー部のエースであるリョウを始め、何事もそつなくこなすハルト、サガラの為なら世界をも敵に回しかねないユツキ。
これだけ強いものがそろっているのも後押しになっていた。
「そうだ!年上だろうが年下だろうが関係ねえ!この世界はつえぇ奴が勝つってセオリーなんだよ!遠慮なんざするんじゃねーぞ!」
覇気にあてられたサガラが興奮気味に叫ぶ。
もともと勝負事に熱くなりやすい性格をしているサガラは、宣言通り先輩だとしても遠慮なく潰しにかかると思う。
真っ直ぐすぎてすぐ壁にぶつかる皇子のそばには、寡黙な騎士がいた。
「サガラのためなら、教師だろうと顔面にぶち当てる」
「顔面はセーフだぞ」
「たとえ」
「ユツキ!手加減なんてしたらぶっ飛ばすからな!」
「…サガラになら、それもいい」
「はい黙れー!お前ら席に座って深呼吸100回繰り返せー」
会話の流れに嫌な予感を覚えたリョウが無理矢理断ち切るように手をならした。
それでこの妙な空気がかき消され、元の雰囲気へと戻ったのを見計らい、リョウは咳をする。
「それじゃあチームわけはこれでいいな?異論はこれ以上認めないぞ!」
もし反対意見などが出ればユツキとハルトの機嫌が右肩下がりになるのは目に見えているので、リョウはさっさと議題をまとめる。
それに主導権をやつらにとられていては終わる話も終わらない。
「よーし!それじゃあさっそく体育館に行くぞ!さっさと体操服に着替えてくれー」
鶴の一声ならぬリョウの一声により、球技大会へ向けてのドッジボール練習が始まったのであった。
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