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あまりにも残酷な世界
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そのまた数日後、花の金曜日にハルトは笠木とともに姿を現した。
ちょうどチャイムが鳴り響きなんとなく異変を察したクラスメイト達は訝しげに近くの友達と会話をかわす。
「えー今日限り萱田君は…」
言いづらそうにシュウへと視線を向けるが、うつむいたまましんだように動かない。
シュウの様子に彼も知ったのかと悲痛に満ちた表情をして、笠木は思い切って現実を口にした。
「萱田君はイギリスへと留学することになりました」
一瞬の静寂を乗り越え、爆発した教室内の空気に後ろで控えていた慎宮が耳を塞いだほどだ。
「静かにしてください!」
笠木が懸命に場を鎮めようとするがやはり唐突な留学宣言には焼け石に水にもならない。
ハルトをひそかにすいていた女子は失神しかけ、サガラとユツキに至っては眼を見開いたまま微動だにしない。
リョウは疲れたように息を吐き、ちらりとシュウのほうを見やった。
机に倒れこんで眼だけはしっかりとハルトを見据えている。
今にも泣きそうな顔を向けられてもハルトは無表情を貫いている。
なんて面倒くさい奴らなんだ、とリョウはじれったさに死にそうだった。
別れの定型文をつらつらと棒読みで語るハルトから、シュウは終わるまで決して眼を離さなかった。
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