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諦めついたreality
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そして朝のHRが終わり、荷物を片づけ始めたハルトにサガラとユツキが急いで飛んできた。サガラは今にもハルトを殴らんばかりの勢いで怒鳴った。
「どういうことだよ!イギリスって!」
「言ったとおりだ」
澄まし顔で教科書をかばんに詰める彼に、ユツキも珍しく眼を釣り上げている。
「…あまりにも、急すぎる。事前に何か言っていてくれれば」
「お別れ会でもしたっていうのか?おれがそういうのは好きじゃないと知ってるものとばかり」
嫌味を吐き捨てられ、サガラがぐっと黙り込む。そしてそれ以上言の葉をつがないハルトについにサガラがブチ切れる。
「おい!!!てめぇ最後まで俺らに何も言わねえままどっか行くのかよ!!シュウの気持ちとか考えたのか!?」
自分の名前が出てきて、シュウはゆっくりと起き上った。顔色はお世辞にもいいとは言えず、さらにサガラの熱を煽る。
「どれだけシュウがお前のことを!」
「サガラ!!何言おうとしてるんだよ!」
怒りのまま恐ろしいカミングアウトをしかけた彼に鋭い叱責がとぶ。怒られてサガラは喉をならした。それ以上サガラが墓穴を掘る前にユツキが口を塞ぎ、ほぼ同じ目線にある冷徹な瞳を覗き込んだ。
「とりあえずイギリス行くなら、言ってほしかった。気持ちの整理がついてない」
「…ああ悪かったな。一生留学するわけでもないから言う必要もないと思ってな」
ハルトを知らない人間が聞けば最上級の皮肉だと詰るだろうが、ユツキは静かに頷いた。
「わかった。元気で」
「お前たちもな」
荷物をかばんにしまい終わって、何の未練もない足取りで出て行こうするハルトに、シュウは意味もなく呼び止めてしまう。
「ハルト!」
「なんだ」
普段と変わらない氷色の双眸にひるむことなく、シュウはうっすらとほほ笑んだ。
「風邪ひかないでね」
単調な見送りの言葉にハルトの眉がぴくりと跳ね上がる。何か言いたそうに口を動かしたが結局何も言うことなく、今度こそ去ってしまった。
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