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レッツミントン!
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「バトミントンしよーぜ!」
「却下」
「こんな流れ前にもあった!」
バトミントンセットを片手に意気揚々とはしゃぐシュウに、ハルトは見向きもしない。
シュウを無視しているのはハルトだけでなく、ユツキの膝の上で漫画を読んでいるサガラも同等だ。ユツキは至福の時に夢中で、誰の話も聞いていない。
こういう場面で、真っ先に肯定の意を示してくれるのは勿論リョウの役目だ。
「いいな!たまには体を動かしたい!」
「サッカー部はどうした」
「顧問が腸ねん転で入院中だ…なにがあったんだろうな」
確かサッカー部にはリョウと宿敵ヒナトがいたな。
大方ヒナトの我儘と横暴さにより、顧問の腸が悲鳴を上げたのだろう。
その哀れな顧問に黙祷を送るハルトの裾を、シュウが強く引っ張った。
「なあハルト!ハルトなら一緒にしてくれるよな!」
「やらない。面倒だ」
「だよね!ハルトが遊んでくれるわけなかった!」
不貞腐れるシュウ。リョウは慌ててシュウの機嫌をとるためにラケットを握って素振りをした。ぶんっと空を切り裂く音に、サガラが少しだけ反応を示した。
「やろうシュウ!俺はやりたいぞ!」
「教室でラケットを振り回すな!あぶねーだろ!」
「すすっすまない!」
いつになく強気なサガラに怒られてリョウは落ち込んだ。
いそいそラケットを机に戻し、ちょこんっとイスに座り込んだリョウを見てシュウの頬が更に膨らんだ。
「いいじゃないかちょっとぐらい遊んでも!」
「高校生にもなってバトミントンとか、恰好がつかないだろ。いいからおとなしくしとけ」
無理やりシュウのアホ毛をつかんで着席させようとするが、珍しく今日はかたくなな態度をして従おうとしない。そんなに遊んでほしいのだろうか。
「いっ嫌だ!遊ぶんだ!じゃっじゃあ俺が負けたら何でもしてやるよ!」
半ばやけくそで叫ばれた言葉に、ハルトの動きが止まる。
サガラとユツキ、リョウまでもが黙りこんでしまい、教室の一角が重苦しい雰囲気に沈んだ。
はずみで言ってしまったシュウだけ、戸惑ったようにハルトとリョウを交互に見比べている。
「本当だな?」
「え?」
「そのことばに、二言はないな?」
ハルトはいつになく感情を亡くした瞳でシュウを見下ろした。冷え切っているというより、内で燃える炎を見破られぬよう隠ぺいした印象を受ける。
「おっおう………」
真剣な声音に怯えながらシュウは首を振ってしまった。振ってしまったのだ。
ハルトは無言で立ち上がり、黒いラケットを握り取る。
「行くぞ。ボコボコにしてやる」
「あっうん………」
なんとなく駄々をこねたくて提案しただけなのに、すごい大変なことになってしまった。
先ほどの元気はなく、シュウは沈んだ表情で力なくラケットを握ったのだった。
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