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結局、折れるんだろ?
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「ハルト!ごめん!もうちょい待って!」
パンを齧りながらシュウが玄関を勢いよく開いた。
ハルトはジッと何も言わず彼の顔を凝視する。額に玉のような汗が浮かんでいるので、結構な時間、家の前で待ちぼうけをくらっているらしい。
「すぐ来るから!あと5分ね!」
早くしろ、とハルトが催促する前に再びドアは閉じられてしまった。
「相変わらず慌ただしいな」
呆れた相貌を向ける場所がなく、仕方なしに空を漂う雲を眺めて時間を潰すことにした。
どう考えても5分から更に5分たったころ、準備が整ったシュウが息も絶え絶えに家から出てくる。涼しげにさらされた二の腕が日の光にあてられて眩しい。
「ごめん!ほんとごめん!」
「どうせ忘れて眠っていたんだろ」
「なんでわかった!」
ずばり言い当てられたシュウの触角が驚きとともにピンっと背筋を伸ばす。
はぁと糾弾を諦めたハルトは、それ以上無駄な口論から背を向けて歩き出した。
唐突に踵を返したハルトに慌てて追いすがりながら、話しかける。
「それで今日はどこ行くー?俺的にはゲームセンターがお勧めかな!」
「本屋に行きたいな。巡るか」
「え?俺の意見は無視?」
「そういえば面白い映画があるらしい。行ってみるか」
「ゲーセン!ゲーセン!ゲーセンンンン!」
駄々っ子のごとくハルトの腕を引っ張って、軌道修正を行うシュウに耐え切れずコメカミをひくつかせたハルトがアホ毛を掴んだ。
「俺はお前の親か。我儘言うな、ひねるぞ」
「なにを!?俺、どうしてもゲーセン行きたいんだ!お願いお願い!」
子猫が母親に甘えるようにすり寄ってくるシュウ。
ハルトはしばらく困ったように視線を泳がせていたがやがて根気負けして、息をこぼした。
「………1時間だけだ」
「わーい!ありがと!」
自分の意見が通って心底嬉しそうなシュウに、ハルトは頭を抱えたくなった。
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